モーダル・インターチェンジ

モーダル・インターチェンジ


セカンダリードミナントと同じ様にコードの幅を増やすためのもので、よく使われるものです。


日本語では、同主調変換と呼ばれます。


まずはモーダルインターチェンジ(以下M・I)がどういうものかを聴いてみます。


メジャーキーでよく使われるコード進行とそれにM・Iを入れたコード進行です。


譜面画像


譜面画像


M・Iが入った方は独特のたそがれ感が出ています。


M・Iとはそういうものです。




M・Iとは


メジャーキーの中に同主調であるマイナーキーの要素を取り入れることができるテクニックのことです。


どういうことかというと


例えばkey=Cの時、同主調であるCmの要素を取り入れることができるということです。


譜面画像


この他にもkey=GならばGm、key=DならばDm、が使えるということです。


セブンスだけではなくトライアドでも使えます。


日本語では借用和音と呼ばれています。


厳密には、他のモードの要素を取り入れることができるテクニックなのですが、殆んどの楽曲はメジャーキー(アイオニアン)にマイナーキー(エオリアン)の要素を取り入れたものが多いです。


モードというのは詳しくは省きますが、メジャーやマイナー以外の音階のことです。


クラシックではメジャー・マイナーが確立されていたので、それ以前で使われていた音階で、民族的・宗教的な音楽になります。


モードという観点から見ると、メジャーもマイナーもモードの中の一部にすぎません。


どういうことかというと、


譜面画像


C Ionianを見てみるとCメジャーのスケールトーンセブンスコードになっており、C Aeolianを見てみるとCマイナーのスケールトーンセブンスコードになっています。


モードで見るとメジャーはIonian、マイナーはAeolianと呼ばれています。


こうして見ると、メジャーもマイナーもモードの中の一部にすぎないということがわかるかと思います。




2種類のM・I


モーダルインターチェンジは2種類に分類することができます。


トニックマイナー

サブドミナントマイナー

です。


何が違うかというと、b6(key=CならばAb)の有無です。


b6(key=CならばAb)が含まれているならばサブドミナントマイナーとなり、それ以外がトニックマイナーとなります。



楽曲を作る上でこの知識は重要ではないのですが、サブドミナントマイナーの概念を知っておくと、マイナーキー以外からのモーダルインターチェンジを知る上で有効な手掛かりになるので頭の片隅にでも入れておくといいかと思います。


次にマイナーの要素を持ってくる使われ方を見ていきたいと思います。




使用例


Ⅳmを使ったパターン


モーダルインターチェンジの中でも特に使いやすく重要なものです。


マイナーコード特有の切ない響きがするので、バラードなどで使われることが多いです。


例1譜面

RadioHeadのNo Surprises


モーダルインターチェンジ有り


モーダルインターチェンジ無し


モーダルインターチェンジ有無で聴いてみると明らかに異なりますが、モーダルインターチェンジ無しでも理論上間違えではありません。


上の例は【Ⅰ-Ⅳm】のパターンですが、【Ⅳ-Ⅳm-Ⅰ】というパターンも多いです。


これはわざとⅣと並べることで変化をハッキリさせるためです。




Ⅴm7を使ったパターン


key=CならばGm7


例2譜面

The Beatles/Strawberry Fields Forever



圧倒的に使うことが少ないです。


調の根幹を成す大切なコードなので、ここを短調のコードと入れ替えてしまうと、「一時的な借用」とは言えなくなります。


何か物足りない、明るすぎる・・・と言った場合に使ってみるといいかもしれません。




bM7とⅦb7を使ったパターン


例3譜面



モーダルインターチェンジは、幾つかの使われ方のパターンがあり、短調からコードを持ってくることになるので、切ない感じになったり、妖しい感じになったり、逆に度数の性質上力強い響きをもたらしたりします。


印象としては、いい意味で調整感が曖昧になるというか、単に明るい・暗いを超越した複雑な感情みたいなものを表現できるサウンドだと思います。


使い方のコツ


まずはメジャーキーで作曲することです。


慣れている人はいいのですが、慣れていない人が使おうとしても難しいと思います。


その後、物足りないコードをM・Iで置き換える、もしくは、コードとコードの間に入れる


そうすれば、最初からM・Iありきで作るよりも楽です。


注意点としては使いすぎないという点です。


セカンダリードミナント等と同じで、使いすぎると転調か何かわからなくなるので、スパイスくらいの認識がちょうどいいと思います。




高度なM・Iの使い方


M・Iはメジャーの中にマイナーの要素を取り入れるのが基本ですが、厳密に言うと他のモードの要素も取り入れることができるテクニックです。


ただ使用頻度はマイナーの要素を取り入れるよりかなり低いです。


ここからはマイナー以外から持ってきたコードを見ていきます。


使用頻度は低いですが、その中で比較的使われているものを見ていきます。




ナポリの6度


「ナポリ」の名は17世紀、イタリアのナポリの音楽家がこの和音をオペラの見せ場で多用したことに由来します。


もっとも、この和音はそれ以前からよく使われていました。


19世紀ではショパンが≪夜想曲≫において多用されていたみたいで、クラシックで使われているテクニックもM・Iとして解釈できます。


では「ナポリの6度」がどういうものか見ていきます。


マイナー系の【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】と比較してみます。


上段は普通のマイナー系の【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】、下段はナポリの6度を使ったパターンです。




わかりにくいと思うのでピアノのみだと


では、なぜ唐突に無関係そうなDbM7が鳴っても問題なく聴こえるのか?


その理由は上で少し触れたサブドミナントマイナーと関係してきます。



比べてみるとルートの「D」と「Db」以外の音は共通しています。

しかも「b6」である「Ab」も含まれています。


つまり、「b6(key=CならAb)」がサブドミナントマイナーを決定付ける音なら、それさえキープしておけば、他の音を動かしても大丈夫じゃないか、という発想でbM7として使える、ということです。


かなり強引な理屈ではありますが、ポピュラーやジャズではこのようなパンク的な発想が多いです。


同じ様な理屈でⅥb7(key=CならAb7)も使用できます。


前が「Ab7」後が「AbM7」です。


セブンスの音以外の構成音は全く同じですが、サウンドはかなり違います。


先ほどマイナー系の【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】での例を見ましたが、今度はメジャー系の【Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ】に強引に入れてみます。




コードだけ見ると唐突過ぎて違和感を感じるかもしれませんが、聴いてみると意外とスムーズです。


わかりにくいと思うのでピアノのみだと


浮遊感のあるサウンドになるかと思います。


「DbM7」の所を「転調している」と捉える人もいるかと思いますが、間違えではありません。




ピカルディーの3度


本来であればマイナーコードで解決するところを、同主調のメジャーコードで解決させるテクニックのことです。


例えば「Cm」で終わるとしたら「C」で終わります。




意表をついたコードなので使ってみてはいかがでしょうか。




bM7


ナポリの6度やピカルディーの3度のように特に名称があるわけではないし、サブドミナントマイナーでもないけれどもよく使われるコードです。


key=Cなら「BbM7」になります。


Automatic/宇多田ヒカル
(key=Cにしています)


「BbM7」で浮遊感が出て、2回繰り返すことで焦らしているみたいです。


本来このコードはジャズとかで耳にするものですがJポップで、まだ15,6歳の少女が使っているのは脅威としか言いようがありません。