ダッチングマシンの整備

 短期間に5台を扱う機会があったので、整備の記録をここに残しておきます。

 このページでは、天虎でいう「数字ホイル」を「文字輪」、菅沼でいう「揺動子」を「振り子」と呼びます。
 整備の行程の記録を「わざと」はしょっている部分がたくさんありますが、この部分についてはもしご質問いただいても回答致しかねます。

 天虎や菅沼の10〜30年代対応を目指す方や、欠けてしまった文字の復活を目指す方には、
 断片的な記録とはいえこのページがヒントになる部分があるは思いますよ。

 このページには、おアソビでいろいろ作成してみた記録もあるよ。台湾年号対応用の「年号3桁」も作ってみたゾ

 ダッチングマシンをいい状態に整備するのは、で〜じなんぎぃ〜さ〜(笑)。

 2016/08/08
 2016/08/28


 ダッチングマシンの整備に当たり、Doctor"TT"様のサイト内の
 (特別企画)【日付印字器(ダッチングマシン)のはなし】のページを、相当に参考&活用させていただきました。
 このページには、大変興味深い情報がたくさん詰め込まれていて、お宝探しのように楽しいです。こちらもぜひどうぞ。

 
 ※トップページではなく【日付印字器(ダッチングマシン)のはなし】のページへのリンクです。

記念すべき天虎1号機。
昭和53(1978)年製。
地方民鉄から直接譲っていただいた。
値段はヒ・ミ・ツっ(格安)。
状態はなかなかよさげ。
→この1行は整備後に撮影。
後面。

剥がれかけていた
「天虎工業株式会社」のシールも
特殊な接着剤で接着した。
内部。

上蓋は、右下にある切り込みを
利用して本体に引っかけられるように
なっているので、日付を変更するときや
掃除をするときなどに便利だ。
1号機入手時の文字輪の状態。
「年」は40〜60年代のみの対応。

もし10〜30年代に対応していれば、
そもそも外に出さないよね(笑)。

社員さんが遊んだのか、それとも
他の個体と交換する必要があったのか、
「月」の10位と1位が上下逆に
セットされていた。

さて、10〜30年代に対応させるため、
さっそく作成に取りかかろうぜぃ。
このプリンカップを始め、
必要な用具をいろいろ揃えた。

型取り樹脂や成型樹脂の他、
非鉄の超精密ピンセットや、
超精密ヤスリなど以外は、
大体が100均で揃ったよ。

ちなみに、このプリンカップは、
若い女の子だらけの、
100均の「ケーキコーナー」で、
いい年こいたおっさん
(ワタクシのことです。)がGETしたよ。
まずは文字輪の型取りをする。

テフロン加工のこのプリンカップなら、
型取り樹脂が硬化後、簡単に取れる。
「年」の10位と1位の型取りにかかる。
型取り樹脂の本来の色は白だが、
写真では黄色の着色料を混ぜている。

ここから先の写真の樹脂の色は、
白や黄色の場合がありますが、
撮影のタイミングによるものです。
最初に各数字(特に4・6・8・9)の
凹み部に空気(気泡)が入らないように
へらの先で樹脂をちょんちょんと
流し込んでから、平面側を下にして
プリンカップの底に押し付ける。
間違ってギア面側を下にしてしまうと
あとで大変だよ。
文字輪は、幸い片面が平面だから
この方法が使えるんだね。
文字輪を中心にして「わっか」を置く。
「わっか」は、単純に樹脂の節約のため。

ちなみに、この「わっか」も
100均でGETした、ケーキの型押し用。
少しずつ樹脂を流し込む。 流し込み完了。
流し込んだ樹脂の圧力で「わっか」の
底から樹脂が少し漏れてくるが、
俺が使った樹脂の粘度では
大事には至らなかった。
流し込みから一昼夜経ち、
プリンカップから剥がした。
ちなみに、樹脂の仕様では、
完全硬化まで24時間。
←をひっくり返した写真。
文字輪をプリンカップの
底に押し付けたつもりでも、
僅かな隙間から樹脂が流れ込んでいた。
これは丁寧にカットする。
文字輪を「中央」にして、
「わっか」を置いたつもりだったが
偏心してるね(苦笑)。
「わっか」の中の樹脂を押すと
簡単に取り出せる。
樹脂から文字輪を取り出す。
簡単に取り出せる。
文字輪を取り出した後の型取り樹脂。
ここから先は成型樹脂を使う。
他のサイトを参考にしつつ、
文字に成型樹脂を流し込む。
写真の型は、「年」の1位。
また一昼夜かけて硬化させ、
型から外す。
周辺のバリを取って、
「文字」として完成させる。
写真のバックは耐水ペーパーなので、
保護色みたいになってるね。
成型樹脂の流し込みを繰り返して、
各数字をいくつか作成した。
のっぺらぼーの文字輪を別に作り、
文字(数字)を貼り付ける。

この作業をしているときに
「『30年問題』対応なんて簡単じゃん。」
ちょろいねって思ったね。

そして各面に文字(数字)貼り付けたら、
それごと、また型取りをして、
成型樹脂を流し込めば完成!

いや〜、簡単簡単。

と思ったら…。
ありゃ、文字の高さが合わない…。

写真は、左が「年」の1位で、
右が今回作った「年」の10位。

この写真を撮る前にわくわくしながら
試しダッチング(試打)してみたが、
もちろん「年」の10位は印字されず…。

「年」の10位の文字の上に樹脂を乗せて
「標高」を高くするとか、
「年」の1位の文字の高さを削って
標高を低くするとか、
思いつくことをいろいろと実行したが、
そんな小細工は通用しなかった。

でだ、

ここから完成までの道のりが
何と何と何と何と何と長かった
ことか!

きれいに印字させるには
文字の高さだけではなく、
他にもいくつもの条件があることが、
試作を重ねるうちに分かってきた。

この第1次試作品から、満足なレベルに
辿り着くまでに、約半年かかった。

この間ほぼ毎日、夜に帰宅後の数時間、
文字輪の作成にかかりっきりだった。
試作は100個以上に及んだ。
最初は、文字輪作成の失敗やコツを
「奮闘記」としてここにUPして、
俺と同じ目標を持っている方々の
お役に立とうと思っていたが、
↑の印字のレベルに至るまでに
予想外の非常な手間と時間と
カネ(主に樹脂代)がかかって
しまったことから、申し訳ないが、
ノウハウは明かさないことにした。

正直「ノウハウの公開はもったいない
と思うもんね。そう思いたくなるほど
「10〜30年代対応」は大変!
だということ。

「お前は人がいい」と言われる俺も、
これほどの苦労は教えたくなくなるよ。
ほんっっっと大変なんだから。

もし簡単にできた方は、まぐれ(笑)か、
優れた感覚の持ち主(ホントだよ)です。

他のサイトでは、さも簡単に作れる
ように書かれているのがありますが、
本心はきっと俺と同じだと思います。

期待してここにアクセスした方々、
悪く思わないでね。
整備2台目。
先輩から整備依頼された菅沼機。
これは整備後に撮影。
内部。
整備後に撮影。
10・20年代に対応させたよ。
がっちがちに固着していて
全く動かなくなっていた文字輪を、
数日かけて汚れを溶かして分解した。

こっちはギア側。
ギアの形状が天虎とビミョーに異なる。

数字とギアは、元々別の部品であり、
何らかの方法でくっつけてある。
ちなみに天虎は一体成型。
←の平面側。
穴ボコや数字がある。
文字輪の軸は「ただの棒」ではなく、
片やテーパー(写真)、片や「潰し」。
なので、振り子に刺さっていても
片側からしか抜けない。
ただの棒ではない理由はなんだろ?

【後日の推測】
いったん抜いた棒をまた振り子に
組み付けるときに、テーパーであれば
部品の「並び」が多少ズレていても、
各文字輪や「.」の金属板の穴に差し込み
やすくなる効果があるかもしれない。
マジックリンと歯ブラシで汚れを
落とし終わった文字輪。
メッキ?が剥がれて地金の金色が
出ている部分がある。
過去に金属ブラシででも擦られているか?
あれ?
「年」の1位の、4と5がないね。
3の次が…→
↑…6だゾ。
あとで先輩から「そういうのもある」と
教えていただいた。でも、なんで?
該当年になったら、
カネを取ってメンテする気か?
左の「年」の1位の空白部分は、
半田付けしていたのが、まるで
取れてしまったかのような凸凹が
文字位置の上下にあるね。

そして、右の「3」(「年」の10位。)は
相当使い込まれてるな〜。
本来なら印字面は尖っていて細い。

ところで…、
この個体は昭和40年製のはずだゾ。
なんで「3」がこんなに摩耗してんだ?
製造年月が刻印されている下蓋が
他の個体と入れ替わったか?
汚れを落とした文字輪を
振り子に組み付けてみた。
ただの整備だったらこれでOK。

でも、これで完成ではないよ。
これから10・20年代に対応させるために
文字輪を作成するゾ。
このスペースを使ってちょっと考察。

文字の位置決めの段階で、
「年」の10位と「年」の1位とでの
文字のズレに随分悩まされた。

何回試作しても、10年通して文字が
揃うレベルに達しなかったからだ。

しかし、これは俺の技術ではなく
元からのようである気がしてきた。

例えば、↑の写真では「年」の10位の
1と2は俺が作成したもので、
「年」の1位の2と5と6はオリジナルだ。

「12」と「22」では、文字がどちらも
ほぼ揃っているが、
「16」と「25」では、文字が明らか
にズレている。

ということは、オリジナルの製造段階で
既に「文字ズレ」が生じていたのでは
ないかと思うが、どうだろうか。

結局、俺はあまり気にせずに
作成することにした。
作成過程を思いっきりはしょるが、
菅沼機のオリジナルを基に、
文字輪を作ったよ。
天虎機に続き、これまた、
「年」の10位と1位をうまく調整するのが
何と大変だったか!
振り子に組み付けた。 「年」の10位の1・2・3・5と、
「年」の1位の4・5の出来。

「年」の10位の3と5は、
オリジナルに文字があったが、
印字がきれいにならなかったので
あえて作成した。
整備のメインは文字輪部分だが、
何せ旧い菅沼機。
文字輪以外の整備にも取りかかる。

まず、券面圧力調整ネジの作成。
元々の規格が地元では入手不可のため、
長いものをえっちらおっちら切断した。
写真は切断完了直前。
大体おんなじ長さでしょ。
もちろん、下が今回作ったヤツね。
別に長いままでも使えたんだけど、
せっかくなら同じ長さにしたくてさ(笑)。
印字マットの固定ピン。
ご丁寧に、先が曲げられている。
印字マットを交換するために
このピンの曲がりを直そうとしたら、
ポキッと折れてしまった。
元々再利用は想定していないのか?
代品をホームセンターでGETした。

ついでに印字マットも
新品のフェルトに交換した。
今回整備した、昭和30年代製造と
思われる菅沼機の振り子などに
使われている「ネジ」は「インチネジ」で、
天虎の「旧JIS」とは規格が異なる。

このネジは、専門的な店で入手できる。
俺は虎ノ門の「三和鋲螺」でGETした。
予備用に多目に確保しておく。
確保できるときにしておくのが鉄則だ。

この店のすぐ近くに出張になり、
ラッキーだった(笑)。
「#5-40」という規格で、首下が1/4インチ。
ユニファイ並目(UNC)。

三和鋲螺には、鍋小(オリジナルは丸小。)
の十字(+)とすり割り(−)があった。
販売は、どちらも10本単位。
平成28(2016)年現在、50本で1,620円。
単価は本数によって多少変わるよ。
ばっちり組み付いた(当たり前か)。
メンテのしやすさを優先するなら
+の方がいいと思うが、
風情は−の方があると思う。
当然オリジナルでもいいわけだし、
まあ、好みですね。
 天虎機に使われているネジについて。

各個体の入手時に付いているネジが
製造時のオリジナルと仮定すると、
個体によってビミョーにばらつきがある。

規格が旧JISだったり新JISだったり、
素材が鉄だったり非鉄だったり。

「振り子」のネジと、ガイドを固定する
ネジの規格や頭の形状が
同じだったり違ったり。

果ては、全10本とも一見同じ規格なのに
文字輪の軸の抜け防止のネジだけが
鉄で、他は非鉄だったり…。

フシギなのは、これらの複数の規格の
ネジと全く同じ物(サイズ、素材、
メッキなど)を探しているのだが、
未だにGETできていないことである。

これまでGETしたのは何かが違うんだよね。
サイズも素材も同じなのにメッキが違う
とか…。 
 別に不足していたわけではないが、
おアソビで樹脂で作成してみた。
左2つがそれ(右2つはオリジナル。)。
 樹脂で作成したネジを組み付けてみた。
写真では、違和感なく、さも使えそうに
見えるが、実使用はとてもムリ。
「粘り」のあまりない樹脂なので
強度が足りず、ちょっと締め付けると、
すぐパキッと頭の部分から折れた…。
粘りのある頑丈な樹脂で作れば
実使用できるかも(自信なし。)。




整備3台目の天虎2号機。
昭和47(1972)年製。
ヤフオクで18,921円。
出所は不明。
おアソビで下蓋をアルミ板で作成した。
欠品していた訳ではない。

この個体は、ある「仕様」にするという
おバカな目論見がある。
後面
文字輪の初期状態。
割ときれいめかな。
振り子のバネ。
思いっきり無理矢理感がある(笑)。
これは、当然交換だね。
カスはあるものの、割ときれいだね。 
上蓋を引っかけるピンが
抜けてしまっている。
リベットを打ち込んで復元した。
文字輪や振り子の整備後に、
菅沼でいう「熊手状弾性板」を
おアソビで銅板で作成してみたが、
柔らかすぎて押さえ方が弱く、
にゅるにゅるしたラッチ感覚。
加工はとても簡単だったが、
小気味よく「かちかち」とはならなかった。
そこで、ステンレス板で再作成した。
金ノコで加工したが、固いのなんの。
でもその分、銅板よりしっかり
「かちかち」した。よかった。
なんでこんなことをしたかというと、
「台湾年号」仕様にするためなんだな。
「おバカな目論見」とは、このこと。
台湾年号の「中華民国」用に
作成した文字輪。

厚みをうまく合わせて作成することや、
文字の配列・調整に困難を極めた。

日本なら「年」の10位と1位を
それぞれ別の文字輪で設定するが、
台湾では「年」の3桁を、
1つの文字輪で対応させている。

↓の1行は、台湾での取材結果。
3桁の文字輪を振り子に組み付けた。

台湾年号対応のダッチングマシン
なんて、日本ではこれ1つだけだろうね。

わはは。
「中華民国」のダッチングの結果。
おアソビにしてはまーまーの出来かな…。

台鉄の硬券はA型かD型なので、
試打用の紙もB型より幅広く切断した。
台湾国鉄(台鉄)のある駅で、
無理矢理頼み込んでダッチングマシンの
内部を撮らせてもらった。
年号がバッチリ3桁だね。
天虎のTA1が活躍している。 台鉄のダッチングの実際。
真ん中の券の日付は、
「21」ではなく「27」だよ(笑)。

「月」の1位に「-」を入れないのかな。

台湾の年号である「中華民国」は、
1912年が元年で、日本の「大正」と同じ。
だから、平成27(2015)年は、
「中華民国104年」なのです。
台湾でも硬券は風前の灯火だ。
整備4台目の天虎3号機。
昭和47(1972)年製。
ヤフオクで20,500円。
出品者によれば、
紀勢本線で使われていたらしい。
内部。
上蓋も外れちゃう…。
後面
入手時の文字輪の状態。
これまでで1番「カス」だらけ。
文字輪をちょっと回転させただけで、
カスがボロボロと落ちてきた。
天虎でいう「廻転スパナー」。
3号機で、純正品を初めてGETできた。
3号機の前面上蓋。 上蓋の、向かって左側
(通常外れる側)の厚み。
上蓋の、向かって右側
(通常外れない側)の厚み。

かなり薄くなってしまっていて、
穴が「決壊」している。
こういう個体って多分たくさんあると思う。
日付を変えるために、毎日毎日この蓋を
開ける訳だから、金属でも摩耗するに
決まってるよね。
内部の振り子止め(?)の形状に、
他機との僅かな違いを見つけた。
こちらは昭和53(1978)年製造の
天虎1号機の振り子止めの部分。

出っぱりの右側の形状が、
明らかに異なっていて↑の方が
とんがっている。

俺が所有している天虎機では
1号機以外の3台
(全て昭和49(1974)年以前製。)が
左の写真と同じタイプだった。

ここ以外にも違いがあるかどうかは
確認できていない。
今んとこ、ここまで。

整備5台目の天虎4号機も
確保してあるので、
以後、整備が進んだらUPします。

↓は、これまで整備などをした
計5台の部品などのデータ。