『御伽噺』


昔と言うほど昔でもなく今かと言うと今でもない、
ここではないどこかの町の青龍洞という名のお店に
智子とたくまという二人の妖艶な女が暮らしておりました。

二人はこの世のものとは思えないほど美しくおまけに年を取らなかったので
町の人々は口々に『あやかし』とか『妖怪』とか言って畏れていましたが、
二人はそんな事は全く気にならないようで日々腐った会話で盛り上がり
楽しく暮らしておりました。

ある日の夜の事、二人の店に男が訪ねてきました。
マサキと名乗るその男は目を奪われるほどの美しさでしたが
その表情には翳りがあり何か裏稼業をしているのではとも思えました。
マサキは道に迷ってしまい一晩の宿を二人に請うたのです。
二人は快く承諾しました。

さすがに『物の怪』とも称される二人、
怪しげなマサキの一人や二人どうという事はありません。
二人はマサキを豪勢な食事でもてなし夜の更けるまで楽しく話をしました。
翌朝店を発つ前にマサキは一晩の宿のお礼にと
小さな苗の植えられた鉢を差し出しました。
「愛情を込めて育てていれば必ずよいことがある」
とマサキは言い残し旅立っていきました。

智子とたくまの二人は鉢植えを大切にしました。
苗は元気に育ちある日ピンク色をした蕾をつけました。
いつ咲くかもう咲くかと二人が心待ちにしていますと
蕾がぽっと開き美しいバラの花が咲きました。
そしてなんとバラの花の中には小さな可愛らしい男の赤ちゃんが
すやすやと眠っていたのです。

智子は言いました。

「まぁ驚いた。
 バラの花から生まれたこの子の名前は睦にしましょう」

たくまはツッコミました。

「なんで睦!?バラの花関係ないじゃん!」

それはさておき。

睦は二人に見守られてすくすくと育ち、
やがて身長147cmの立派な若者に成長しました。
睦は二人に言いました。

「ママ、僕は悪い奴をやっつけに旅に出ます」

智子はよよよと泣きながらいつかこんな日が来ると思っていたと
縫い針で作った刀を差し出しました。

「ママこれ小さいよ」

たくまは黙って欠けたお椀を渡しました。

「ママこれも役に立たないよ」

睦がそういっても二人は黙って首を振るばかり。

「ママ僕は旅の途中で仲間を見つけなければなりません。
 どうか三色団子と合コンを僕に持たせて下さい」

たくまはツッコミました。

「合コンて何それ!?持てるもんなのそれ!」

それはさておき。

近頃鬼ヶ城に住む鬼城主が己の欲望のために町の美しく若い男ばかりを
攫っていくので町の人々はたいそう困っておりました。
睦は鬼ヶ城の鬼城主を退治に行こうと決意していたのです。
次の日睦は針の刀と欠けた椀を腰に下げ、智子の作った三色団子と合コン
を懐に入れると鬼ヶ城へと旅立っていきました。


海辺の道にさしかかった時、睦は苛められているカメを見つけました。
苛めているのは盗賊です。
顔に大きな刀傷のある怖そうな男や体の大きな男達ばかり。
睦はどうしようか迷いました。
と、カメがいきなりガオーと吠えて樋口三連発 *注1で盗賊たちをやっつけて空の彼方へと飛んで行きました。

「強いカメもいるのだなぁ…」

睦は感心して旅を続けました。
睦は山道でくっしーゴリラ出くわしました。
くっしーゴリラは吠えました。

「何だお前、ミジンコみたいに小さいな。どこへ行く気だ」

睦は三色団子を差し出しました。

「鬼ヶ城に鬼城主を退治に行くのです。
 どうかこれで僕の仲間になってください」

くっしーゴリラは三色団子が大好物だったので睦の家来になる事にしました。
旅を続ける一人と一匹はイエティ*注2あんどーに会いました。
くっしーゴリラは吠えました。

「何だお前、真っ白で毛むくじゃらだな。俺たちの邪魔をするな」
「@*%△#□○×…」

イエティあんどーは日本語が話せませんでした。
睦は黙って合コンを差し出しました。

「#&%$!!△○×□※※!!」

イエティあんどーはたいそう喜んで睦の家来になりました。
更に旅を続ける一人と二匹の前にコバ熊が立ち塞がりました。
くっしーゴリラが吠えました。

「お前熊の癖になんでワカメみたいなロン毛なんだ!」

睦はコバ熊に話しかけました。

「僕たちは鬼ヶ城に鬼城主を退治に行くのです。
 あなたにも仲間になって貰いたいけど、あいにくもうあげるものがないのです」

睦は少し悲しげににっこりと微笑みました。
睦の笑顔に悩殺されたコバ熊は答えました。

「僕は何も要りません。あなたのお力になりましょう」

そして睦と三匹の珍獣は鬼ヶ城を目指し旅を続けたのです。


*注1 平成ガメラ三部作で樋口特技監督が編み出した荒技。マニア度5
*注2 チベットの雪男。マニア度2


ようやく鬼ヶ城に着きました。
睦は大きな門の前にぐわしっと立つと大声を張り上げました。

「やいやい我こそはバラから生まれた睦だ!
 鬼ヶ城の鬼城主を成敗しにやってきた。
 尋常に勝負勝負!」

コバ熊、くっしーゴリラ、イエティあんどーも大声で叫びましたが
三匹同時に吠えたので何を言ったかさっぱり分かりません。

小窓から顔を出した門番は睦の姿を見て
『これはきっと城主様のお気に召すぞ』
と思い、急いで城主に届けました。

城主は大喜びで睦たちを城の中へと招き入れました。

鬼城主が欲望の限りを尽くし酒池肉林が繰り広げられているとばかり思っていたコバ熊は驚きました。
美しい庭の木陰やベンチで何組ものカポーが楽しそうに話をしているではありませんか。

「バラから生まれた睦とやら、私がここの城主の御弐(オニ)です」

挨拶をしに出てきたのは頭皮の上の友達が去ってからもう随分経っていそうな優しそうなおじさんでした。
見た目に騙されてはいけないと睦は気持ちを引き締めますが
どう見てもこのオニ城主が悪い奴には思えません。

くっしーゴリラが吠えました。

「なんだここは!どういうことか説明しろ!」

城主はニコニコしながら答えました。

「ここは別名ハッテン城と言いまして、理想の相手を見つける場所なのです」

城主は近くにいた二人を呼びました。

「話を聞いてみるといいでしょう」

色白の青年が答えました。

「睦さん、俺はここで理想の相手寿夫にめぐりあいました」

スポーツマンタイプの青年が答えます。

「俺と雪人は体の相性もばっちりなんだ」

睦は自分の間違いに気付き俯いてしまいました。

「ほっほっほっ、若い頃は失敗する事もありましょう。
 せっかく遠い所からいらしたのだからおみやげを差し上げますよ」

城主は笑ってなにやら取り出しました。

「これは打ち出のウチワと言いまして扇ぐとよいことがあるのです」

城主は睦をひと扇ぎしました。

するとなんと言うことでしょう、
睦の身長がぐんぐん伸びて167cmになったのです。

続いてコバ熊は立派なワカメロン毛の若者に、
くっしーゴリラは顔はゴリラな若者に、
イエティあんどーはふさふさの冬毛が夏毛に変わりました。

睦はコバ熊の姿を見て真っ赤になってしまいました。
どうやら一目惚れしてしまったらしいのです。

コバ熊はとっくの昔に睦にメロメロでしたから二人は恋人同士になりました。
くっしーゴリラは蜘蛛という少年に会い恋に落ちました。
イエティあんどーは合コン片手に楽しそうです。

それからみんなずっと幸せに暮らしましたとさ。

「ちょっと!とさ。って何よ、とさ。って!
 おうちで待ってる智子とたくまはどうなんのよ!!」

まぁまぁそれはさておき。







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