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槍ヶ岳北鎌尾根

【日程】2011年4月29日〜5月3日

【参加者】 瀧根 西村 西田

【報告】

アンナプルナ隊の最終合宿が北鎌尾根を舞台に実施された。参加者は西村・西田・瀧根の3人で、七倉から入山して途中滝谷を挟み西穂まで縦走の予定であった。結論的には槍ヶ岳から飛騨沢を下降したが、5日間という千種にしては長期間の合宿の意義は大きいものがあった。ここではアンナ隊としての総括を別とした山行報告をしたい。


1. コースタイム

4月29日
 13:00 七倉ダム発
 14:30 名無小屋着

4月30日
 03:00 起床
 03:50 出発
 04:50 湯俣出発
 10:30 千天出合
 13:00 1900m地点着
 14:00 幕営

5月1日
 全日沈殿

5月2日
 04:00 起床
 05:20 出発
 06:20 P2
 13:40 独標
 16:10 北鎌平
 17:55 槍ヶ岳P
 18:30 肩の小屋

5月3日
 05:00 起床
 09:00 出発
 14:00 新穂高着


2. 行動記録

前日までの疲れもあったので集合を遅らせ、全員が松本ICを出発したのは11時近くであった。七倉のゲートには丁度タクシーがいたのでダムまでお願いする。(2100円)東京電力の要請で客がいようがいまいが常駐しているらしい。聞くと北鎌には6人と2人のパーティが入山しているとの事。

名無小屋は畳が敷いてあって薪ストーブもあるので、少々早いが泊と決定。早速火おこしに掛かるが、煙突が外れていて煙がたまったものじゃない。何とか上手く繋ごうと奮闘するが徒労に終わる。それでもその内火力が安定してくると何とか我慢できるようになった。置いてある薪を使わないよう焚き木も集め、長谷川恒夫の宿泊記録や1998年元旦の瀧根・浅野Pの記録などを繰る。畳の上で早めに就寝。

4月30日

湯俣までは40分程で着く。川には湯気が立ち登り、まさに湯俣である。ここからの1日は西田リーダーと決定。つり橋を渡ったしょっぱなから悪いへつりとなる。約2時間で最初の渡渉。皆、パンツ一丁になって渡った。笑いながらムービーを回す。そこから3時間半位の間にあと2回同じように渡渉を余儀なくされ、最後はチロリアンで荷物を移し空荷で飛び石を渡ってクリアーした。いずれも深くて膝上くらいのものだがやっぱり冷たい。そんな渡渉を含め、やはり核心の半分はアプローチにあると言っても過言ではない。千天出合からは30分程で左岸に渡って取り付きのP2尾根に出合う。2時間程の急登をこなすと雷雨となった。最悪そこでの泊を考えて雪を切って台地を作り1時間程様子を見るが、結局幕営と決定。樹林帯の中であり、木々から2m以上離れているから落雷の危険もない。ずぶ濡れ状態で寒かったが一杯やりながらゆっくり水を作る。雷雨は続き、稜線に張っていたら怖いだろうなと先行者を気遣う。

5月1日

1日中沈殿。皆、雨間を見計らって数少ないトイレを済ます。

5月2日

沈殿中にパーティやリーダーの在り方を反省し、改めて今日もリーダーを西田として出発。1時間でP2に着いた。北鎌のコルで先行の3人に追いつき、先のピークで抜かせてもらう。挨拶したところ川崎のパーティで「有名な千種アルパインですか」なんて言ってくれたが本心からの「とんでもないです」は謙遜に聞こえただろうか。西村曰く、リーダーがAGSJ(ガイド協会)のワッペンを付けていたとの事。独標を越えた辺りで今度は三峰山岳会(都岳連加盟)の3人を抜かせてもらう。しっかりした感じのリーダーが「最近若い人が増えているんですよ」と言うだけあって、33だという女性が不釣合いなくらい明るく感じるパーティだった。冬期小屋で一緒に酒を飲めるかな、との期待もあったが我々が槍の穂先に取り付く頃彼等は北鎌平に防風壁を作り始め、叶わなかった。西田が山頂の祠のすぐ下で行き詰まったので瀧根が突破して山頂へ。西田は1日リーダーの重責を任され、心身とも大変だったと思う。これで糸が切れて危険かもしれないと下降用にロープを出す。梯子を支点に60mをダブルで一回、鉄の杭を支点に60m一杯で安全圏に立った。何とかラテを使わないで肩の小屋に着。何と冬期小屋に泊まっても1人5,000円だと言う。迷わずテン場(1人500円)を選択し防風壁を作ろうとするが固くてシャベルが入らない。すぐ諦めて整地もせず設営した。四隅とサイドをしっかり張ったから何とかなるだろう。遅くなったが荷物が乾いているのが救いである。22時まで飲んだり食ったりした。

5月3日

予定では今日は奥穂山荘までの縦走であるが、疲労度合いなどから下山とした。飛騨沢を下りるだけなのでゆっくり起きるはずだったが、アマチュアカメラマンの足音で5時には起こされた。のんびりお茶を飲み、食事をして撤収。尻セードをしたり滑落停止の練習をしながら下降。振り返ると飛騨沢の斜面が丁度アンナプルナの鎌氷河のように輝いていた。

【技術的な留意点】

  1. 注意していても腐れ雪で谷足を取られて後ろに倒れる危険性が高い。今回も全員がひっくり返った。樹林帯では下にある樹の位置を確認しながら歩くと良いが、雪壁ではそうもいかない。基本はピッケルを効かせる事と体勢を前に低くする事、とは言ってもそうは行かない場合もある。即死亡事故に繋がるので特に春山は要注意である。ロープを繋いでいると却って一蓮托生となるので厄介だ。
  2. 腐れ雪でなくともステップを壊す場面が良く見られた。ステップに立つ際、後ろ足で蹴るような歩き方だとステップに衝撃荷重が掛かって崩壊に繋がる。またステップに丁寧に足全体を乗せないと荷重が部分的に集中して崩壊に繋がるし、つま先立ちによる一点荷重も崩壊に繋がる。当然ダブルアックスあるいはシングルアックスと片手への、デリケートな荷重の分散をしなければならない。
  3. 岩雪のミックスになってくると「岩は苦手だから」は通用しない。普通に岩登りや冬壁をやるなりアイゼントレーニングをするなどの準備が必要となってくる。要は歩きだけ、沢だけといったように自分の山を固定化せず、何でもやる事だ。
  4. アプローチはむしろ冬より厄介だと言える。へつりや渡渉の失敗は致命的だ。ルートファインディングも重要。
  5. 登りも下りもアックスを伸ばしたポジションよりヘッドを持ってピックを押さえるポジションが有効な場合が多い。伸ばしたポジションだと足が崩れた場合ピックが雪を切ったら終りだが、後者はピックに荷重を掛けられるからだ。いずれにしても易しい雪稜に親しんで総合力を付ける以外ない。
  6. 生活技術も重要だ。余分な水を作るのは燃料の無駄だし食事にどれだけ水が必要か、またできるだけ水分を摂るという食当の計算が重要になってくる。湯気を立てるのは最低限にしないとテントを無用に濡らす事になる。火器の取り扱い、コッフェルを倒さない配慮は必要不可欠なものだし、強風の中でテントを設営するのも整理整頓も技術の内だ。

まだまだいくらでも出てくるが、会の合宿など、とにかく実践を通じて勉強していくのが大事だと思う。特定のメンバーとしか山に行かない場合の弱点は意外と多い。パーティのあり方やリーダーの役割、メンバーシップやチームワークを創るという観点から見ても、合宿が少なくなって個人山行が多くなっている昨今の現状が残念である。今回の北鎌尾根は条件が悪く、大変だった。それだけに充実した満足できる山行でもあった。総括を本番に生かしたい。

(瀧根 記)

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