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錫杖岳左方カンテ登攀(平成19年8月11日〜12日)

千種アルパインクラブ
花田尚房

先発隊(勝野、井戸、田中)10日14:00定光寺発〜槍見温泉駐車場(幕営)
後発隊(武藤、湊、花田) 10日21:00定光寺発〜槍見温泉駐車場(幕営)


11日

AM4:00起床、5:00出発〜7:00錫杖沢出会、幕営設営〜9:30左方カンテ取り付き〜14:30 3ピッチ目終了点にて撤退決定〜17:00錫杖沢にて幕営

12日

AM5:00起床〜7:00出発〜8:00槍見温泉駐車場

ハーネス、カラビナ、ヘルメット、ロープ、シューズよし!
ファックスで送って頂いた装備リストを見ながら、もくもくとザックに詰めていく。シュラフを入れ、マットをくくり付けなんとなく担いで見る。
げげ!・・重い・・。こんな重量を担いだのはソロで表銀座を縦走した時以来だ。いかん!もっと軽量化をしないと・・。

8月11日〜12日に錫杖岳左方カンテ登攀に千種アルパインクラブの先輩に連れて行って頂ける事になった。もちろん僕にとっては本ちゃん岩デビューだ!ドキドキわくわくしながら10日の集合時間を心待ちにしていた。集合日の日中は期待と不安で仕事なんか手に付かず、やる気ゼロ(笑)

予定どおり21:00時に定光寺の駐車場に集合してみると、車が何台も止まっている。真っ暗なので誰の車なのかさっぱりわからない?そうこうしたら後発隊の同行者の湊さんが声をかけてきた。一通りの挨拶をすませザックを湊さんの車へ・・。『何?この大きくて重いザックは・・?』 『何が入っているの?』

あれから僕としては重いシュラフを外し、シュラフカバーだけにして、大きいマットをエアーマットに替えて自分なりに軽量化してみたが、湊さんのザックは確かに軽かった。『何?ってリストどおり入れたのですけど・・。』
『こんな重いザックを背負って登れるの?』
『アプローチに2時間はかかるよ・・!』
確かにこんな重いザックを背負うのは少々不安だ・『少し減らします・・。』

僕は真っ暗な駐車場の中、車のヘッドライトを照らしてザックの荷物を減らした。そうこうしていると武藤さんが到着した。真っ黒な駐車場の中でヘッドライトを照らして荷物を出している僕を見て半分呆れている様子だった・・(笑)

何とか装備を減らしてザックを車に入れいざ出発という時、今度は財布の入った袋が無い! 荷物をひっちゃかめっちゃかしてようやく青い袋を見つけた。

こうしてスタート時より波乱な幕開けである。やれやれ・・・。

11日

AM2:00に槍見温泉駐車場に到着後、仮眠の為すかさずテントを設営し就寝。

AM4:00に起こされ先発隊と合流し、一通りの挨拶をすまし、各自朝食を取りながら準備する。 僕はさらに装備を減らしたいので、勝野さんに見てもらい装備を減らした。そして共同装備を各人に振り分ける、僕にはテントが渡された。共同装備をザックに突っ込み担いでみた。 あまり最初と重さが変わらない・・(笑)。それでも担ぎ上げなければならないので気合を入れた。

AM5:00出発。槍見館前の電話ボックスに登山届けを入れ登山道に入っていく。

5分前に気合を入れたのに、歩き始めて3分で心が折れた(笑)睡眠不足な上、重い荷物を背負っての急登で足が上らない。僕以外のメンバーの足取りは軽々登って行く。1時間ほどで1本立てた。勝野さんに『どうだ?』と言われたので、『楽勝ですよ!』と強がってみたものの、笑えるくらい、ヘロヘロだった(笑)

登山道は1本道だが、1ヶ所沢を右岸から左岸に譲歩する所があった。雨で増水するとそこは渡れなくなると言う事だった。その後2度ほど喘いでアップダウンしたら、本日登る錫杖岳前衛フェースが見えてきた。

インターネットで何度も見た景色が目の前に・・。

見た感じ300メートルくらい垂直に伸びた岸壁に朝日が前衛フェース全体に当たり黄金色に輝いており、登る左方カンテもはっきり見えた。

ここを登るのか・・。 感動は一瞬、その後自分に登れるのか不安がよぎる・・。

AM7:00過ぎに錫杖沢出会に到着。今夜の寝床のテントを素早く設営し、サブザックに登攀用具と行動食と水を詰め込み左方カンテ取り付きまで沢を詰める。

出発前に勝野さんから『水は自分の1日の飲む分とビバーク用を持参する事』と言われた。当初僕は水1500mlを持参する予定で考えていたが、アポローチで結構疲れていて、この疲労感で軽量化出来るのは水と行動食しかないと思い、水500mlとおにぎり1個を減らして持参した。この軽量化があとで悲惨な目に合うことも知らずに・・・。

9:30頃取り付きに到着し、装備をつけて登攀開始。6人パーティーだが、2チームに分けてロープを繋ぐ。最初に(勝野さん、花田、井戸さん)の順で登り、そのあと(武藤さん、湊さん、田中さん)で登る。ロープが5本あるので1本はフィックスの為に井戸さんが引いて登った。

1ピッチ目

『勝野さんから登ってよし!』と声がかかり登攀開始。出だしが少々狭いチムニーになっており背中を押さえつけながらズリズリ這い上がる。

今回のためと言うわけではないが、サブザックを新調した真新しいザックがいきなり岩に挟まれボロボロに・・。 泣きながらビレーポイントまで登る。

『セルフを取って!』と言われ、スリングを木に巻きつけセルフを取る。

そこで『スリングが長すぎる』と指摘され、修正する為に思わず環付カラビナのゲートを開けてしまった。ここで勝野さんにお叱りを受ける痛恨のミス!

それもそうだ、ここで落ちれば確保されていない状態で滑落してしまうのだから・・。こんな事は一度もした事無かったのに・・。ショックを引きずりながら2ピッチ目に入る。

2ピッチ目

ここもIV級程度らしいが、後半にかぶり気味の個所があり意外に難しい。アタフタしていると奥のクラッツクにカムがセットしてあり、それを頼りに何とかクリアー出来た。カムから後光が指して見えた(笑)。 サードの井戸さんがなかなか取れなかった!  とおっしゃっていました。そりゃそうだ、僕の体重でしっかり食い込ませておいたので・・(笑)
ここで武藤さんチームが登ってくるのを待つ事に・・。

この日は天気が非常に良くかなり暑い。幕営場からのアプローチと2ピッチで持参した水があと500mlしか残っておらず、今後の為にも飲めない状態に・・。行動食もすでに取り付きでパンを食べてしまい、おにぎりとチーズしか残ってない。それにしても暑い・・。  待っても、待ってもなかなか登ってこない。

ここで既にお昼を回っていた。あまりの暑さに一口一口水が減って無くなっていく。そしてとうとう禁断のおにぎりに手を付け食べてしまった。これで後はチーズとサラミが少々と水も400mlくらいしか残っていなかった。食べ物は我慢できるとしても、水が無いのはマズイ!あと5ピッチもあるというのに・・。こんな食料計画ではあきらかに失敗だ! 僕は心の中で後悔した。

そうこうしていると武藤さんが登ってきた。

3ピッチ目

このピッチは左方カンテの核心らしく、1段上ったピナクルから2〜3手のトラバースがありV+と言うグレードだ。このピッチは武藤さんチームが先行して登る事になった。武藤さんは空身で登ってザックをあとから荷揚げし、後続の為にフィックスを張る事になった。 武藤さんチームが登り、後続の勝野さんが簡単に登っていき僕の番に・・。1段上のピナクルまでは簡単に登れたが、そのあとのトラバースを見て驚愕した。こんな所リードでどうやって突破したのだろう?そう思ってふっとロープ見ると、何故か僕のロープがサードの井戸さんのロープと絡まっている。それを何とかしようと試みるが、なかなか解けない。足元は100mくらい切れ落ちていて両足が乗るか乗らないかの場所だ。普通なら簡単に解ける絡みなのに、ビビっているので考えがまとまらない。ようやく絡みが解けてトラバースしようにも攻略法が解らない。 下から『あぶみを作って突破しろ!』と指示を頂くが、そんな物は作った事がないので解らない。ボルトにスリングがかけてあったので、それを頼りに突破した。ボルトが抜けたら墜落だぁ〜と思いながら・・。

そして3ピッチ目の終了点のテラスで井戸さんが登ってきた所で武藤さんから提案があった。『このままのペースで行ったらとても最後まで登りきれない』『あと5ピッチもあるし仮に終了点まで行けても夕刻になりビバークになるかも?』たしかにこのペースで行ったら早くて夕刻、遅ければ夜になる・・。

おまけに最悪なのは水の持ち合わせがない事だ!僕はこの時点で400ml弱しか残っておらず、他の人も暑さでかなり不足していた。

ここで降りるとしても懸垂に時間がかかり、さらにテント場までの下降の時間を考慮したらギリギリの時間だった。  武藤さんが各人に聞いた・・。

僕の中では、せっかくだからもう少し頑張りたい気持ち40%、登る為の技術の不安、水の残量や体力不足60%と考えた。こう考えては負けである・・。

『僕は降ります・・。』 各人も撤退に同意した。

懸垂支点で勝野さんが井戸さんに支点製作のレクチャーをしている。

その後武藤さんから順に懸垂下降で降りていく。僕は3番目に降りる事になった。そこで勝野さんからロープを担いで重量を増して降りるように言われた。

重量が増すとスピード制御が難しくなるので経験しとくと良いとの事。支点で勝野さんから懸垂下降のレクチャーをして頂く。『よし行け!絶対制動手は離すな!』と言われ飛び出していく。僕はこんな長い距離の懸垂下降もそうだが、空中懸垂も初めてだった。降り始めてすぐにスピードが制御出来なくなった。自重に加えロープの増量が落下スピードを加速した。足が壁から離れ空中に飛び出した頃、さらに加速して必死で制動手をコントロールする。  この時絶対にダイエットするぞ!と思った(笑)その後2回目の懸垂支点でもレクチャーして頂き、ようやく最初の取り付き場所に降りられた。 やっと安全地帯に降りられて緊張から開放される。あとは錫杖沢をテン場まで降りるだけだ。頭の中はビール、ビール、ビール!(笑)

しかし意外に沢の下降は大変だった。おまけに空模様が怪しい・・。そうこうしていると雷がゴロゴロ鳴ったかと思ったら雨が降り出してきた。樹林帯の中で雨宿りしていた時『結果的に撤退して良かったね、登攀中なら大変だったね』との声が・・。 確かにあのまま登っていたら雨の中の登攀になり非常に危険だし、僕のような初心者を連れての登攀下降も大変だっただろう・・。

雨が小降りになった所で滑るように(僕は本当滑って沢に落ちかけた・・笑) 沢を下降してようやくテン場まで戻った。その後みんなで乾杯した!

夕飯は武藤さん推薦の焼きラーメンだ!これが旨いのなんのって・・(笑)

夕飯後は宴会をした。酒は田中さんが重いのに頑張って担いだ焼酎を頂く。

夜も更け楽しい宴会も終了し就寝の為にテントへ・・。僕と田中さんは少し沢を登った岩の下に張ったテントに入る。しかし、そこには一般登山者のオジサンがいた。オジサンは僕らが張ったテントと岩との間の隅にシユラフだけで寝ていた。オジサンがAM3:00頃にごそごそと物音を立てるので僕はぜんぜん寝られなかった。

12日

今日は下山するだけだ。オジサンのせいで寝不足な体に無理やり朝食を詰め込み、あと片付けをして下山した。

下山途中に昨日の早朝に見た錫杖岳前衛フェースが見えるポイントで振り返った。昨日と同様に黄金色に染まった前衛フェースに『もっと修行して出直して来い!』と言われている気がして、悔しくて写真を1枚撮った。

こうして僕の本ちゃん岩でビューは敗退で終わった・・。

反省

今回の錫杖岳左方カンテに参加させて頂いて、結果的に3ピッチで敗退した事は天候悪化もあり正解だったと思うが、普通の技量あるメンバーなら、雨が降るまでには終了点を抜けていたと思われる。僕にはそれをこなす絶対的スキルが足りず、本ちゃん岩に行くにはまだ早いと痛感しました。今後パッキング、食料計画、体力、登攀技術などのスキルを上げて、再度、初心者アルパインルートの錫杖岳左方カンテに挑みたいと思います。残念ながら今回終了点まで行けませんでした、でもアルパインクライミングの世界の一歩目の入り口には立てた気がしました。

この扉を開いて頂いた千種アルパインクラブに感謝します・・。