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前穂北尾根4峰正面壁 松高ルート〜東壁都立大ルート

2005年6月26、27日
西村・市川(記)

*5月末にも同じ計画で入山したが、取り付きであえなく敗退したため、
リベンジを計画。予定通り完登できた。

<26日>
 午前6時半、上高地を歩き出す。吊り尾根付近の残雪は、1カ月前よりも減ってるものの、
稜線の一部はまだ白く、まだかなり雪が残っているようだ。
徳沢から新村橋を渡り、林道から樹林帯を歩く。
松高ルンゼが正面に見えるところで、雪渓に乗る。すでに汗だくだ。
6月のアプローチは「暑いやろうなー」と思ったので、短パンで正解だった。
長ズボンの西村君は、あごから汗がボタボタ落ちている。

 先月、「雪渓のほうが涼しくて登りやすいし、そのまま登っていけば
2時間ぐらいで4峰取り付きに行けるやろ」、と軽い気持ちで中畠新道北側の
雪渓を詰めていったら、奥又白の雪渓に出る直前にボロボロのルンゼが登場。
両側は切り立ってが、そこしか行けそうになかったためしょうがなく登っていったら、
まさかというべきか、やはりというべきか、こぶし大の落石が飛んできて、西村君の
右脇腹を直撃。ザックのウエストベルトと脇腹の境目に当たり大事は免れたものの、
数センチの傷口から出血。そのまま敗退したのだった。
今回はおとなしく、赤テープのはられた中畠新道に取り付く。

 剱・源次郎のような樹林帯の急登を行き、奥又の雪渓に出る。4峰はすぐそこだ。
ピーク下の緩傾斜帯は先月、残雪で白かったが、さすがに6月にはない。
1・2間リンネには雪が残っており、下から見ると垂直に近い傾斜に見え。
ちょっと不安になる。時々、落石の嫌な音。
B沢上部から50―60センチはありそうな岩もどんどん落ちてくる。
あんなのに当たったらひとたまりもない。上を見ながら慎重に登る。
C沢から4峰正面壁方面の60度くらいの雪壁を登ると、緩傾斜の岩の斜面。
ロープを付けずに30メートルぐらいホイホイ行くと、傾斜が突如急になった。
登りすぎた。「あ、やばい」と思ったが後の祭り。すでに松高ルート1ピッチ目に
入ってしまっていた。下を見ると、奥又の雪渓まで吸い込まれそうなすごい傾斜だ。
スラブ状の岩でしっかりとした手がかりはない。ピンもない。
「やばいよ、やばいよ」と奇声を上げながら、何とかクライムダウンする(>_<)。
一時間近いロスだ。取り付く前は「早く行ければ今日中に都立大も登っちゃって、
前穂ピークでビバークがいいかも」なんて、甘いことを話していたが、
4峰を越えられるか不安になる。C沢からちょっと登ったテラス状のところに
古いボルトがあり、そこがルートの始まりだった。

(1ピッチ目)市川リード。気を取り直してロープを結び、登り返す。
残置ピンは、古いハーケンが2本、草つきの間に見つかった。
途中で落ちると、このハーケンではひとたまりもないが、ロープを結んでいると、
なんて簡単に思えるんだ!最後のほぼ垂直の岩を越えると、安定したテラスに着く。

(2ピッチ目)西村リード。1ピッチ目同様、岩はもろい。途中、ハングした岩を右に
回り込むところがいやらしい。凹角に アブミが2台残置してあり、ありがたく頂く。
冬壁を登りに来て、敗退したのだろうか。顕著なクラックの右側を登り、
灌木のはえた大きなテラスに着く。

(3ピッチ目)市川リード。岩は硬くなり、サクサク登れる。草つきが鬱陶しい。

(4ピッチ目)西村リード。核心の松高ハングは100度くらいの傾斜で高さは
2メートルほど。ハング左上にガバがあり、A0で十分だが、慎重には慎重を
期すということで、A1で行く(^O^)。岩は硬く、支点も効いてそうだ。

(5ピッチ目)市川リード。楽勝。

(6ピッチ目)西村リード。高度感もあって快適。上部の緩傾斜帯に着き、
ロープをほどく。午後4時半。西村君はさっさと歩きだすが、待ってくれーって感じ。
こっちはいま登ってきたばかりでヘロヘロだから(;_;)。
最終ピッチのフォローって損だよね。終了点から、北尾根方面にトラバースしていく。
20分ほどで縦走路に着く。「やった、終わった。あとはぼちぼち歩くだけ」と思ったら、
霧のため縦走路を何度も見失う。あっちでもこっちでもウロウロを繰り返し、
やっと4峰頂上。北尾根の縦走路って、涸沢側を巻くことが多いのね。
3・4のコル手前の涸沢側に、快適なビバークサイトを見つけ、ツエルトをはる。
午後6時半着。涸沢ヒュッテの明かりがきれいだ。岩の隙間に、
ガスがいっぱいのガス缶が3つも捨ててあり、ありがたく使わせて頂く。

<27日>
東壁取り付きまで近いため、明るくなった午前5時に起床。吊り尾根方面から
ガスがどんどん飛んでくるが、天気は悪くなさそうだ。午前6時に出発。
3・4のコルから急な雪壁を下り、インゼル上部を越え、B沢に入る。
雲一つない青空が広がった。時々、落石がわれわれの数メートル横を
飛んで過ぎていく。「当たりませんように」と願いながら、傾斜60度ぐらいの
雪渓を行く。小1時間で東壁真下に着いた。ここまで来れば落石はないだろう。
都立大の取り付きを探すが、アンカーらしきものは見えない。トポを見ると、
取り付きはコンタクトライン沿いに2、30メートル登ったところだという。
もろい岩の緩い斜面をアイゼンをはいたままノーロープで登り始めるが、
これが間違いのもとだった。どこもスラブ状で、トップの西村君が「ウググッ」と
声にならない声を上げながら、やっとのことでペツルの打たれた
取り付きに到着。市川は手がかりがありそうだからと、左の斜面を登るが、
右にトラバースできなくなった。しょうがないから、セルフビレーを取った
西村君にロープを投げてもらい確保してもらう。これで、もし落ちても、
あの落石のようにB沢を飛んでいくことはないだろう。
そう思ったら気が楽になって、なんとか無事取り付きに。これで1時間ロス。

 (1ピッチ目)午前8時半、市川リードでスタート。トポでは、クラックを
右上するルート。トポ通り、右上するクラック沿いに、ハーケンが打たれている。
左の方の壁を見ると、赤いシュリンゲのかかったハーケンが見えるが、
右のクラックを登る。3本目ぐらいのハーケンに比較的新しいカラビナが
残置されていた。退却の時に残置したものだろうが、よく見ると、
その上のコーナークラックに残置ピトンはない。クラックはフィンガーサイズで
ジャミングがよく決まるが、こけが一面に張り付いていて登られた
形跡はない。あちゃー。ルートを間違ったか。コーナーの出だしはエイリアンの
掛け替えで行くが、上部へ行くほどかぶってくる。数メートル上は
1ピッチ目終了点のテラスのようだが、もう下のエイリアンを取って、
上にはめるのは無理そうだ。フリーで行くと5・10プラスぐらいあるんじゃないか。
よく見ると2メートルほど右に急な草つきがあった。クラック横の垂壁に
ナイフブレードを1本打ち、フィフィをかけて、草つきに立ち上がろうとするが、
左手のスローパーしか手がかりがない。「落ちるー」と叫びながら、
苦しまぎれに腰のホルダーからバイルを取り出し、草つきに打ち込む。
グサッという心地よい音。何とか効いてそうだ。右手のバイルと左手は
マントリングで立ち上がる。ハーハーゼーゼー。左にトラバースすると
空中に付きだしたようなテラスに着いた。下のアンカーから真上に
登ってくれば、良かったのだろうか。よく分からないピッチだ。また1時間のロス。

(2ピッチ目)西村リード。きれいなスラブ。リスにハーケンが山ほど打ってある。
傾斜は80度以上ありそうだけれど、アブミの最上段に立ち上がって
クリップするのに苦労はない。スラブが終わり右にトラバースするところに、
新しいペツルが1本打ってあり、そこでピッチを切る。

(3ピッチ目)ハング帯の下を右にトラバースするピッチ。
残置ピンはどれもやばそうだが、4峰北条新村ルートのトラバースよりは
簡単だ。もっと上に行こうか迷うが、古いハーケン4本とエイリアンで
確保する。テラスの端に14型テレビ大の浮き石があり、ちょっと触れた拍子に
落ちてしまった。ガガーンという音をB沢全体に響かせて見えなくなった。
後続パーティはいないようなのでほっとした。

(4ピッチ目)西村リード。赤い壁を右に見ながら、 核心のハング帯を行くピッチ。
出だしから、行きつ戻りつ迷っている。相当悪そうだ。左のかぶった壁の錆だらけ
ハーケンにアブミをかけても、正面のハングの上にあるハーケンには届かないようだ。
ボロボロのお助けシュリンゲにアブミをかけている。もし切れれば、ハング下に
宙づりだ。大丈夫かと、ハラハラする。何とか、その上のクラックにエイリアンを
かけて乗越していった。上部のチムニー状になったところでも苦労していたが、
そのうちスルスルロープが伸びていくようになった。エライ!セカンドの番だが、
ハング帯で岩がかけたのだろうか、つかんだエイリアンがスポーンと外れて
ハング中程で宙づりになってしまった(*_*)。墜落距離はあまりなかったのが幸いし、
左側壁にかけていたアブミに手が届き、難を逃れる。ヘロヘロになって
1・2間リンネにはいると、西村君がニコニコしながら迎えてくれた。
終了点には新しいリングボルトがあった。午後1時半。小雨が降り始める中、
ロープを解き、アプローチシューズに履き替えアイゼンを付けて、リンネに残った
急な雪渓を登る。雪が柔らかく、滑ったら東壁を真っ逆さまなので、アイゼンを
はずして北尾根2峰の斜面にトラバース。ハイマツをつかんで2峰に登り、
5メートルの懸垂。1、2間リンネ上部のコルにでる。あとは岩くずの多い斜面を登り、
午後2時45分、前穂のピーク到着。あとは上高地まで散歩のようなもの
(のはずだった・・・)。重太郎新道をかけ下るが、貴美子平からしばらく下りた辺りで、
大きな雪渓に出た。「尻制動だったら気持ちよくおりられるだろーなー」という
あまーい誘惑に耐えられず、雨具を着込んでアイゼンを付けて、よーいドン。
ところが、気持ちいい斜面は数百メートルで終わり、雪の消えた谷筋になってしまった。
くそー、思いながら下っていくと、その下には30メートルの大きな滝が出現。またまたあちゃー。
一度しまったロープを再び出して、灌木から懸垂2回で、奥明神沢の雪渓に下りられた。
灌木には残置シュリンゲがあり、尻制動の誘惑に耐えられなかったアホな登山者が
他にもいたようだ(-_-;)。あとは安定した雪渓をかけ下って、岳沢ヒュッテ。
そこから1時間走って、18時5分の沢渡行き最終バスに何とか間に合った。