トップ日本の心Blog基調自己紹介おすすめリンク集メール

 

  政治・経済・社会

                       

題目へ戻る

 

ber117

 

アベノミクスの金融政策を指南〜浜田宏一氏

2013.4.28

 

<目次>

はじめに〜“伝説の教授”が安倍内閣の内閣官房参与に

1.浜田氏と安倍首相の関係

2.デフレ下の日本経済の状態

3.日銀がデフレの原因だ

4.日銀と短資会社の利権が国を傾けている

5.日銀法は改正すべし

6.財務省による増税路線は間違っている

7.安倍氏は日銀・財務省を批判する

8.わが国が取るべき政策はこれだ

9.インフレ目標の下で大胆な金融緩和をせよ

10.金融緩和を十分にやれば財政政策も有効

11.デフレ脱却とともに円高是正もできる

12.そのうえ経済成長を目指すには、国民の団結が必要

結びに〜日本は必ず復活する

 

 

ber117

 

はじめに〜“伝説の教授”が安倍内閣の内閣官房参与に

 

 米イェール大学名誉教授の浜田宏一氏は、第2次安倍晋三内閣の内閣官房参与に就任し、安倍政権が進める金融政策の理論的な柱となっている。浜田氏は、国際金融に対するゲーム理論の応用で世界的な業績をあげ、ノーベル経済学賞に最も近い日本人と言われる。だが、わが国内では、一般にはほとんど知られていなかった。ジャーナリストの勝間和代氏が、“伝説の教授”浜田氏から経済学を学びたいと考え、早稲田大学教授の若田部昌澄氏とともに、浜田氏の講義を聴講するという内容の本を出した。それがきっかけとなって氏の名前と理論・主張が知られるようになった。

 三人の共著『伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本』(東洋経済新報社)で、浜田氏は、巻頭に、東京大学教授時代の教え子、白川方明日本銀行総裁(当時)を批判する公開書簡を掲載した。それまで日銀の経済理論の誤りと白川氏の金融政策の間違いを指摘し、是正を求めてきたが、改善がないので、公開書簡を市販本に載せる仕方で、強く批判したものである。本書はまた経済学を基本から深く学び、日銀、財務省、メディアの報道等への批判力を養うことのできる好著である。

 浜田氏は新著『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)でも、白川日銀総裁を厳しく批判している。財務省に対しても遠慮なく、その責任を指摘している。また日米の著名なエコノミスト、政策当事者等60人以上に聞き取りを行った結果として、「外国人学者のほとんどすべて、尊敬すべき日本の学者たちは、潜在的成長率のはるか下で運営されている日本経済を『ナンセンス』だと考えているのだ。そう、アメリカは、いや世界は、日本経済が普遍の法則に則って運営されさえすれば直ちに復活し、成長著しいアジア経済を取り込み、再び輝きを放つことができることを知っている」と書いている。本書は内容が明快で分かりやすく、しかも深い。現在、最も広く日本国民に読まれるべき経済書だと思う。

 本稿は、インターネットに掲載されている浜田氏の対談記事を資料として編集し、氏の理論と主張を紹介するものである。

 

  

1.浜田氏と安倍首相の関係

 

 浜田氏は、自分と安倍氏の関係について、浜田氏は「安倍首相とは、小泉内閣時の経済財政諮問会議に内閣府の研究所の所長として陪席したときからの知り合いです。当時、内閣官房副長官を務めていらっしゃった安倍首相は、よく意見を理解していただきました」と述べている。(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 ここで内閣府の研究所というのは、内閣府経済社会総合研究所のことである。浜田氏は、平成13年(2001)から15年(03)まで所長を務め、国政に関わった。

 このたび浜田氏が安倍氏の金融政策のアドバイザーになったきっかけについて、浜田氏は次のように述べている。「衆院選に向けて金融政策をいろいろと掲げていた昨年(註 平成24年)の11月ごろだと思うが、首相からアメリカに直接電話があった。日銀の独立性や国債の買い取りなどについて意見を聞かれ、メモをしたためてファクスを送ったのが密接な対話の始まりだ。首相からの電話にビックリした」(産経新聞 平成25年1月22日)

 文中に「首相」とあるが、当時安倍氏はまだ首相ではなく、自民党総裁として衆議院総選挙を控えていた。衆院選に向けて経済政策を取りまとめるに当たり、浜田氏に助言を求めたものだろう。

 この国際電話が直接的なきっかけとなって、浜田氏は安倍内閣の内閣官房参与に就任した。内閣官房参与は、内閣が対応すべき各種分野において優れた識見を有する人材を首相が任命し、首相に対して情報提供や助言を行う非常勤の国家公務員である。公式の相談役ないし指南役というところだろう。

 安倍内閣の内閣官房参与となったことで、浜田氏は“伝説の教授”から“時の人”となった。

 浜田氏は、この変化について次のように語っている。「これまで私の持論は、日本では異端のように見なされ、いくら人に説明しても聞いてもらえませんでした。私は普段アメリカに住んでいますが、たまに日本へ帰国して講演会をやっても、人はパラパラという状態でした。それ安倍首相理解を示してくれたおかげで、いまは内閣官房参与として、堂々と官邸に赴き、首相に提言できるようになりました。そして著書が売れたことで、世間一般にも、私の長年の持論が、受け入れてもらえるようになりました。これは大変ありがたいことです」(「週刊現代」201329日号)

 ここで著書とは、先に引用した書籍のことである。ページの頭へ

 

2.デフレ下の日本経済の状態

 

 浜田氏は、昭和11年(1936)生まれである。この年、ケインズが『雇用・利子及び貨幣の一般理論』を発行した。このことから、浜田氏は「ナチュラル・ケインジアン」を自称している。しかし、浜田氏はその一方、フリードマンを高く評価してもいる。氏はケインズ主義の経済学と新古典派経済学を総合し、批判的に継承・発展させている経済学者の一人と見るべきだろう。

 さて、浜田氏は、近年の日本経済をどのように見ているか。

 浜田氏は言う。「今日本が直面している問題は、経済が潜在生産能力のはるか下のところで運行していることです。金融を引き締めし過ぎていて、日本経済は実力を発揮し切っていない。つまり、失業、過剰設備の存在のために需給ギャップがあって、潜在生産能力の一部が失われているのです」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 潜在生産能力とは、企業が資本設備を遊休させないで過不足なく稼動させ、労働力も完全雇用の状態となったときに発揮し得る生産能力のことを言う。内閣府は、潜在的な実質GDPとは、企業が資本設備を遊休させないで過不足なく稼動させ、労働力も完全雇用の状態となったときに達成されうるはずの、実質GDP水準であると定義している。これに基づくならば、潜在生産能力が十分発揮された場合の潜在的な実質GDPと実際の実質GDPの差を、GDPギャップと言う。わが国は、潜在生産能力の一部が失われていることにより、巨大なGDPギャップを抱えている。これが一般的にいうデフレ・ギャップである。

 浜田氏は言う。「鉱工業生産で見る限り、リーマン・ショック以降の不況で、世界中でもっとも痛手を受けたのは日本の産業でした。リーマン危機の震源地であるアメリカやイギリスの損傷よりも日本経済の損傷のほうがきわめて大きかったのです。それが今もってまだ治っていないというのが実態です」(現代ビジネス 2011.3.10)

 なぜこんなことになったのか。その原因は、デフレと円高である、と浜田氏は言う。

 「2008年秋にアメリカ発の世界的な金融危機が発生して以降、米FRB、欧州中央銀行、イングランド銀行は、それぞれ2・8倍、2・1倍、3・5倍も通貨供給量を増やしました。これに対し日銀だけは、20%しか増やしていません。このことがさらに急速なデフレと円高を進め、企業が不況に喘ぐ要因となったのです。つまり、世界で日本の『一人負け』状態だったのです」。(「週刊現代」201329日号)

 リーマン・ショック後、大規模に通貨の供給量を増やした米国・欧州・英国の中央銀行に比べ、日銀はほとんど通貨の供給量を増やしていない。そのため、デフレと円高が進んでいるのである。ページの頭へ

 

3.日銀がデフレの原因だ

 

 日本経済を危機的状況に陥れている元凶は、日本銀行である。日銀の誤った理論と政策が、日本を危うくしているというのが、浜田氏の見方である。

 浜田氏は、日銀をヤブ医者だと厳しく批判する。

 「日本経済という患者に処方箋を与えるのが、経済学者の仕事(略) しかしこれまでは、胃痛を訴えている患者(日本経済)に対して、医者(日銀)は薬を与えてこなかった。それどころか、時に世界中の経済学者が理解に苦しむ摩訶不思議な薬を与えたりしていた。しかも『日銀の独立性』を盾にして、他の医者には往診させないため、患者はヤブ医者を頼らざるを得なかった。これでは病が治るはずもなく、まさに日本の悲劇です」と。(「週刊現代」201329日号)

 上記は、本年(25年)2月の言葉だが、2年前の23年3月にも、次のように述べていた。

 「バーナンキは恐慌の専門家の世界的権威と呼んでもいい人ですけど、リーマン・ショック後、彼が議長を務めるFRBでは大幅にバランスシートを膨らませた。いってみれば、貨幣の供給量を増やしたわけです。それから非常に尊敬されたファイナンスの学者・マーヴィン・キングが総裁を務めるイングランド銀行も、アメリカ以上に増やしたです」

 欧州中央銀行もそうだった。イギリスと同じく非ユーロ圏のスイス、スウェーデンもそうだった。アジアでは、韓国も金融を大幅に緩和した。自国通貨も従って下落した。

 浜田氏は言う。「そういう国々ではこの政策が非常に上手くいっていて、少なくともその政策を続けている間は物価の下落を反転させて、不況からもある程度回復させることができた。ところが日本だけはそうせずに、『日本は今までの金融秩序が安定しているだからいいだ』と主張し続けたわけですね」

 そして、その批判は、当時の日銀総裁・白川氏に向けられる。

 「まるで白川さんの頭の中は、眼前の花壇である金融業界さえ安定していれば、一般国民がどんなに失業してもかまわないと思っているかのように見えます。教えていたときには、人の苦しみもわかるような学生と思っていたが、失業、倒産の苦しみより日本銀行の組織防衛のほうが重要になってしまったのでしょうか?」と。(現代ビジネス 2011.3.10)

 日銀はインフレ対策を志向し、デフレに対しては、積極的に取り組もうとしなかった。浜田氏は、その姿勢を、厳しく批判する。

 浜田氏は言う。「白川総裁を筆頭とする日銀の経済学者たちが、「インフレは悪いものだが、デフレは必ずしも悪いものではない」という考え方を持っている(略)『日本銀行百年史』には序文から、『日本銀行の創設はインフレーションを収束させることを大きな目的としていた』と書いてあります。つまり日銀は、1882年の創設当初から、『インフレとの闘い』を目指していたのです」

 実際、日銀は明治15年(1882)、西南戦争の費用捻出の結果、急激なインフレが起こったことを教訓に設立された。

 浜田氏は続ける。「戦後も、終戦直後のハイパーインフレ、オイルショック時のインフレなどを経験したことから、日銀はいまだに、二度とインフレを起こさないことが使命であると自負しています。特に1998年に新日本銀行法が施行されて以降は、デフレと円高をもたらす緊縮金融政策を、一貫して取り続けてきました」(「週刊現代」201329日号)

 こうしたインフレ対策を志向する日銀は、独特の理論を作り上げた。それは世界的な経済学者や各国の中央銀行の理論とは異なる日銀以外には見られない特異な理論である。浜田氏はこれを「日銀流理論」と呼んで、その誤りを指摘する。

 浜田氏によると、日銀は「『金融政策だけではデフレも円高も阻めない』という『日銀流理論』を振りかざしてきた()」。だが、「経済学には200年余りの歴史があり、いまやかなり先端的な経済理論が構築されてきています。こうした経済理論は、『金融政策はデフレと円高に対して有効である』ということを証明しています」(「週刊現代」201329日号)

 ところが、日銀は経済学の研究成果をまったく取り入れようとしない。デフレに対して積極的に対応しようとしないのは、誤った日銀流の理論による。日銀は積極的に金融緩和をしない。これはわが国の社会の特徴を考えても、非常に誤った態度である。

 浜田氏は言う。「日本はモノやサービスを買うときに現金で支払うのが一般的ですが、米国はクレジットカードや小切手で支払うことが一般的。つまり、日本は市中に出回る現金の量が、もともと米国よりも圧倒的に多いのです。それを無視する日本銀行の自己擁護論は、日銀の用いる多くの詭弁の一つです。記者の方も言いくるめられてしまうのですね。リーマン・ショック後は、米国も大幅な金融緩和を行ないましたが、現金社会である日銀の金融拡張の度合いは、何もしていないのと同じでした。各国のベースマネーの絶対量を比較するのではなく、変化量を比較しないと、金融緩和が十分か否かを論じることはできません」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 日銀は、デフレを放置することで、円高の進行を招いた。その結果、日本の輸出産業は、大きなダメージを受けている。

 平成24年(2012)2月に、エルピーダメモリが破綻した際には、「日の丸半導体の没落」の象徴と言われた。だが、浜田氏はその原因は、日銀による超円高だとする。

 「エルピーダ破綻の要因は、ユーロ危機や経営の誤算だと、一部マスコミは書き立てました。しかし同社の経営者は、記者会見で『円高にやられた』とはっきり述べています」「2008年の金融危機以降、円はドルに対して30%も高くなりました。一方、韓国ウォンは米ドルに対して、30%も安い。ということは、エルピーダはサムスンやLGと世界の市場で競争する際、始めから60%ものハンディを負わされているのです。6割ものハンディを負わされたら、どんな企業努力をしても太刀打ちできません。エルピーダだけでなく、最近不調に喘いでいるソニー、パナソニック、シャープなども、他国の企業との競争に勝てない最大の要因は、まさに急速な円高にあります」(「週刊現代」201329日号) ページの頭へ

 

4.日銀と短資会社の利権が国を傾けている

 

 日銀の問題点は、単に理論と政策にあるだけでない。短資会社との癒着、天下りもあることを浜田氏は指摘する。

 浜田氏は言う。「現在日銀は預け金に0.1%程度のわずかな金利を付けています。それは主に、銀行間の短期資金の仲介を行なう短資市場の保護を目的にしていますが、預け金の金利がゼロに近い市中金利と比べていくらか有利なため、市中銀行の資金が日銀に戻ってきてしまうという、金融緩和に日銀自身がブレーキをかける現象を生んだ。その結果企業への貸し出しにお金が回らず、これは悪いやり方だと思います」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 なぜこのように短資市場を保護するような金利を預け金につけるのか。そこに天下りの問題がある。詳しくは浜田氏との対談で、元財務官僚・高橋洋一嘉悦大学教授が暴露している。まず浜田氏は次のように言う。

 「日銀の職員がどれくらい短資会社に天下りしているのか分かりませんが、短資会社の利益が日本銀行の利益に繋がっているということになると、短資会社はいくら実質金利が高くても名目金利が高くないと稼げないから、名目金利の水準を保つことがどうしても必要になってくる。だから市中銀行が日銀当座預金に積んでおかなければならない法定準備を上回る部分---超過準備につける利息も0.1%なんですよね。日銀銀行がほんの少しだけ残しておくわけです」「利害関係に操られたアイデアが影響していると考えたほうがいいのかな・・・」

 続いて高橋氏は言う。

 「短資会社は法律上、巷の街金業者と全く同じ位置づけ」「同じ出資法に基づく貸金業者」「ただし、日銀の息の掛かった短資会社だけは、特別なステータスを与えている」「特別な認可を与えている。それは『短資会社指定』といって、日本銀行の天下っているところだけ」「短資会社は、日本銀行の人が天下っていて、場所も実際に日本銀行の周辺にある」と。(現代ビジネス 2011.3.18)

 つまり、日銀は短資会社と利権でつながっており、その利害関係から預り金に金利がつけられている。そのことが、金融政策の効果を打ち消している。日銀職員の私利私欲が国全体を傾けているのである。中央銀行の職員がカネの亡者となり、私腹を肥やすために、デフレを放置してきたとすれば、恐るべき構造である。

ページの頭へ

 

5.日銀法は改正すべし

 

 さらに大きな問題は、日本銀行法にある。現行の日銀法は、平成9年(1997)に全面的に改定された。日銀法について、浜田氏との対談で、安倍氏は大意次のように言う。

 政府が、経済の現状を認識して目標を立てて、あとの手段を日銀が選ぶという仕組みには、そもそも最初からなっていない。政府と日銀で、認識と目標が共有されていない。「問題点としては、政府が、経済の現状を認識して目標を立てて、あとの手段を日銀が選ぶという仕組みには、そもそも最初からなっていないということです」「政府と日銀で、認識と目標が共有されていない」と。

 浜田氏は、安倍氏に応えて言う。

 「それが日銀法の問題点だと思うのです。日銀法(ほそかわ註 現行のもの)ができたのは、大蔵省不祥事とかいろんな政治的きっかけがある。中央銀行の独立性がある国のほうが上手くマクロ政策をやっていたような例もありました。独立性自体はいいでしょうが、困ったことに、日銀法では手段の独立性だけではなくて、目的の独立性まで日本銀行に与えてしまった。ですから、国民に対して政治責任を負っている政府が考えるべき、国民生活の雇用とか国民所得などに対して、どの辺まで政策が努力したらいいのかを日本銀行が決めるかのようになってしまったのです。確かに細かい手段について、日本銀行の人が一番統計や実務を知っていて、経験も豊かなことは事実かもしれません。しかし非常に緊縮的な失業が多いような状態を日銀が目標とするようになってしまったのは、明らかにおかしい。日本銀行が手段だけでなく、目標まで自分で決めているというところが現行法の問題だと思います」(現代ビジネス 2012.11.29)

 こうした認識を明らかにする浜田氏は、日銀法の改正が必要だと主張する。岩田規久男氏らの主張に賛同するものである。

 「有権者の信任を得た政治家が金融政策の舵取りをきちんとするのが政府の役目であり、その目標を達成するために具体的な手段を使って金融政策を実施するのが日銀の役目。そうした体制にするために日銀法を改正すべきだという意見に、私も賛同しています。きちんと約束しなければ、国民の信頼を得られないでしょう」と浜田氏は言う。(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 安倍政権になって日銀は、25年1月22日政府と共同声明を出すようになった。安倍氏が日銀法の改正をちらつかせながら、強力な交渉力で、デフレ脱却のための金融緩和を飲ませた結果である。共同声明について、浜田氏は、次のように言う。

 「日銀が政府の金融政策を補助していくことになった点は非常にいいことだ。ただ現行の日銀法は、日銀の『自主性』が書いてあり、強制するわけにはいかない。あまりドラスティックに改正する必要はないが日銀法を変えるべきだ」「政府が日銀と経済目標をある程度は共有、または指示できるようなシステムに、法的根拠を与える必要がある。日銀は国民に対して責任をとっていない。経済目標は有権者に責任を負う政府が決めるようにしないといけない。また、日銀法に雇用や適正な成長などを盛り込むべきだ」と。(産経新聞 平成25年1月22日)

ページの頭へ

 

6.財務省による増税路線は間違っている

 

 浜田氏は日銀だけでなく、財務省も批判する。次の引用は、首相になる前、自民党総裁だった安倍晋三氏との対談におけるやりとりである。

 浜田氏は言う。「財務省の人には悪いけれども、地震(ほそかわ註 東日本大震災)があったからみんな支持してくれると、天災を増税の口実にしているかたちです」

 安倍氏は言う。「これを機に財務省は増税を進めようとする。しかも日経新聞や、かなりの経済学者もそれを支持している。われわれは相当頑張らないと飲み込まれてしまって、結局財政赤字はさらに悪化していく危険性すらある。税収はそんなに伸びないどころか、ダウンするかもしれません」

 浜田氏が応えて言う。「橋本龍太郎先生が総理だった時もまったく同じです」「結局、景気が悪くなり、税収も減収した。法人税、個人所得税まで減収していくという状態でした」(現代ビジネス 2012.11.29)

 安倍氏が現在の財務省の姿勢を言っているのに対し、浜田氏は橋本内閣の時も同じだと言っている。私見を以て補足すると、平成9年(1997)、橋本内閣は、消費税を3%から5%に引き上げた。それが要因の一つとなって、わが国はデフレに陥った。すでにデフレ傾向にある中で行った橋本内閣の消費増税と、デフレが続いている現在行われようとしている消費増税は、ともに財務省(旧大蔵省)が推進している。そのことを浜田氏は認識し、間違っていると見ているわけである。

 浜田氏の批判は、政府そのものにも及ぶ。安倍政権になる前、平成23年(2011)以降は民主党政権の経済政策を厳しく批判してきた。

 まず浜田氏は、今日の経済学を次のように見ている。

 「経済学というのは、これでも200年以上の歴史がある学問です。その中でいろいろ試行錯誤をしつつ事実を観測しながら、それを整合的に説明しようと考えてきた。経済学の場合には全部を実験して確かめるわけにはいきませんから、生理学的側面は、ある程度、秩序立てて予測しながら業績を積み重ねてきました。そうした中で、『どこに水を流せばどこに水が流れる』とか、『この場合はこの薬を使えば熱が下がる』とか、いったことでは分かってきたことも多い」

 「経済学は精密科学ではないので、自然科学のようにパッと予測するとか、制御に関してはまだ曖昧な面があるということは認めます。それでも200年ほどいろんな人が事実を積み重ねつつ、考えてやってきた」

 ところが、平成23年当時、民主党の菅直人内閣は「その現実をまったく無視するアイデアに取り込まれた人ばかりを集めて一つの内閣を作った(略)国民にとっては非常に恐ろしいこと()」だと浜田氏は語った。(現代ビジネス 2011.3.4)

 浜田氏は、管内閣を「ヤブ医者ばかりの内閣」と断じる。菅直人総理は、「増税すれば経済成長をする」と言い、枝野幸男官房長官は、「利上げすれば景気回復する」と言う。官房副長官・藤井裕久氏は、元財務大臣だが、円高論者で財政再建派。経済財政担当大臣の与謝野馨氏は、「円高でいい」「デフレでいい」と言い、日銀を擁護等々、といった顔ぶれである。

 浜田氏は言う。「世界中で経済学者が積み上げてきた200年くらいの知恵が、ヤブ医者の軍団に全く無視されている状態は本当に悲しい」「無知な政治家のお陰で企業収益が落ち込み、倒産が増え、多くの人が職を失い、世を儚む人まで出てきてしまうのは本当に不幸なことです」と。(現代ビジネス 2011.3.10)

 リーマン・ショック後、世界は1929年の大恐慌以来の経済危機にある。その中で、鉱工業生産で見る限り、世界中でもっとも痛手を受けたのは日本の産業である。リーマン・ショックの震源地であるアメリカやイギリスの損傷よりも日本経済の損傷のほうが大きく、まだ治っていない。

 浜田氏は、不況に関していえば、経済学では大恐慌の時の教訓が非常に重要と言う。

 浜田氏によると、大恐慌は「『金本位制をそのまま維持していたので経済がよりまずくなった』というのが現在の通説です。ところが私らが若い頃に習ったマルクス経済学では、『金本位制が壊れたから資本主義はダメになっただ』と説明されていました。今の政治家はそのころの誤った理解で政策を決めているように思える。高齢の医師が、自分が20歳代の頃に学んだ知識だけを頼りに患者を治療しているようなものです。」(現代ビジネス 2011.3.4)

浜田氏は続ける。「言ってみるならば他の国ではさまざまな『動物実験』や『臨床実験』を積み重ねたうえで、いろいろなことが判明し、それに従った政策をやっている。ところが日本では古い知識に凝り固まった医師が、最近の研究成果を利用しようとせずに、『金利が下がると日本銀行の不利になる』と『税金が下がると財務省の権限が少なくなる』といった自分の頭の中で勝手に考えた信念によって経済政策を歪めちゃっているです。そういう誤った学問の内容を変えていくために、私らは今までに学び、研究した経済学を無駄にしないように、日本だけ迷信に近い学説がはびこらないように、真剣に闘っていかなきゃ、いけないなと思うです」と。(現代ビジネス 2011.3.4)

 この発言は、日銀と財務省の両方への批判を含むものだろう。浜田氏が「高齢の医師」「古い知識に凝り固まった医師」にたとえる政治家は、「自分の頭の中で勝手に考えた信念」で動いているというより、日銀や財務省に誤った考え方を吹き込まれ、そのために誤った政治をやっているというべきだろう。

 浜田氏は、菅内閣を後継した野田内閣の経済政策に対しても批判を行った。

 「野田首相は、『政治生命を賭けて』消費税増税の法案成立に突っ走りました。消費税増税の前に、大胆な金融緩和を行うべきだったにもかかわらずです」

 「金融緩和をせずに消費税率を上げればどうなるか。国民の実質上の所得が減り、その結果、税収が減り、税収が減った結果、日本経済は破綻に向かいます」と。そして、次のように言う。

 「『正しい処方箋』は、増税の前に大胆な金融緩和です。これによって、消費者、産業界、政府が『三方一両得』となるのです」(「週刊現代」201329日号)

 増税が必要だという主張は、わが国が巨額の財政赤字を抱えており、財政を健全化しないと、財政破綻するという見解による。増税論者は、財政規律の必要性を強調する。この財務省が説き、多くの政治家が重要だと考えている財政規律について、浜田氏は次のように言う。

 「財政規律というのは、たとえば地震のような災害があったとき、政府がそれに対処するためには財力がないと困るので、必要だとは思うです。けれども、現在のような金融引き締めのままで、ただ税率だけを引き上げるという形では、財政再建は達成できないことは明らかです」(現代ビジネス 2012.11.29)

 「経済学者も悪いのです。ギリシャは国も民もみんな借金しているわけですが、日本の場合は、国のほうは富んでいます。世界で見ても、中国には負けるかもしれませんが、日本は今のところ世界の最大債権国です。だから円が下がらないで上がってしまうわけです」(現代ビジネス 2012.11.29)

 財政破綻論者は、政府の粗債務だけを見て、借金を強調する。だが、わが国は世界最大の債権国でもある。債権と債務の差である純債務は、多くの先進国並みに過ぎない。また政府の債務の多くを占める国債は、その95%が国内で消化されている。ギリシャの国債は外国人投資家が買っているのとは、まったく事情が違う。日本国債の金利は、世界最低クラスである。それだけ、政府の信用が高いということである。一国の財政を粗債務だけで見て、危機だ、危機だと煽るのは、国民をだます犯罪である。

 浜田氏は、菅内閣・野田内閣を批判し、デフレ下の日本は大胆な金融緩和をすべしと説く。しかし、これまで、デフレ脱却に金融政策を使おうという政治家は、ほとんどいなかった。浜田氏は言う。

 「政治家の頭の中には、金融政策を使おうというアイデアが頭の片隅にもないように見える。それが非常に心配なんです。一方、日銀の白川さんは『包括緩和』というネーミングで、国債以外の資産を買うのもいいということを打ち出した。これは一見前進しているようにも見えますが、一番多量に買える長期国債というスタンダードな方法は、財務省を助けることにつながるのでイヤだという意味なのか、それについては非常に嫌っていますね」(現代ビジネス 2011.3.10)

 白川元日銀総裁が打ち出していた「包括緩和」は、量的緩和を行うポーズを示すだけで、実際に量的緩和を積極的に進めるものではなかった。しかし、ほとんどの政治家は、日銀の欺瞞的な態度を見抜けず、それを是正することができなかった。大多数のメディアも同罪である。わが国は、中央銀行に巣食うカネの亡者によって、デフレの泥沼に突き落とされていたのである。

なお、財務省の財政危機論や財務省による増税路線の誤りについては、私がネットやマイサイトに書いてきたように、1990年代後半から菊池英博氏、山家悠紀夫氏等が批判してきた。国際的に高く評価されているエコノミストの宍戸駿太郎氏も、増税路線の誤りを指摘してきた。世界的な経済学者の浜田氏も同様の見解を広く国民に明らかにした今日、これら先駆者の再評価がされるべきだろう。また浜田氏自身、これらの経済学者の評価を論じるべきである。ページの頭へ

 

関連掲示

・拙稿「経世済民のエコノミスト〜菊池英博氏

・拙稿「橋本=小泉構造改革を告発〜山家悠紀夫氏

・拙稿「日本経済復活のシナリオ〜宍戸駿太郎氏1

 

7.安倍氏は日銀・財務省を批判する

 

 浜田氏は、民主党の菅・野田両政権の経済政策を批判したのと違い、安倍首相を高く評価する。平成24年11月、安倍氏が首相となる前の対談で、安倍氏の経済学的な知見の正しさに太鼓判を押している。

 安倍氏は、この対談で浜田氏を相手に次のように、日銀・財務省への疑念を語った。

 「正直申し上げて金融については特別詳しくはなかったのです。しかし(小泉政権で)官房長官に就任するといろんな政策について説明を受ける立場になり、いろいろ教えていただく機会は多くなり、その中で勉強させていただきました」。

 安倍氏によると、ちょうどその直前、森喜朗首相、宮沢喜一財務大臣の時代に、日本銀行の速水優総裁が、政府側からしばらくゼロ金利体制を続けてほしいという要請があったにもかかわらず、それを止めてしまった。その1年後、結局、景気は厳しくなった。そこで彼らは当座預金にお金を積むという量的緩和をした。しかしその後、小泉政権になり、日銀総裁も速水から福井俊彦に代わったが、そこで量的緩和を止めてしまった。その時、小泉総理と安倍と日銀の福井総裁、武藤敏郎副総裁の4人で昼食をともにする機会があった。そこで安倍氏は「もうしばらく量的緩和を続けてもらえないだろうか」という話をした。当時のことについて、安倍氏は、「『そうはいっても、この人たちはみんな金融の専門家だから、日銀の言うことが正しいのかもしれない』ということが頭にありました。しかし、その後、自分が総理になり辞めてしばらく経って、これまでのファクトの積み重ねをふりかえって見ると、必ずしも彼らが正しくなかったということが分かってきました」と語っている。

 また次のように述べる。「福井さんはいまのデフレ状況はある程度やむをえないという考え方なんです。日銀がいろんな様々な政策を打ったところで、そう簡単に変えることはできないというのです。彼は『いいデフレ』と『悪いデフレ』があるという言い方をしていました」「『いまはいいデフレに近い』という話をされたわけです。そのとき素人の私として素朴に思ったのは、ではそれをコントロールできないというのなら、日銀の存在とは何なんだということですね」と。そして次のように続ける。「問題点としては、政府が、経済の現状を認識して目標を立てて、あとの手段を日銀が選ぶという仕組みには、そもそも最初からなっていないということです」「政府と日銀で、認識と目標が共有されていない」(現代ビジネス 2012.11.29)

 安倍氏は、日銀だけでなく財務省についても、厳しい見方を開陳する。

 「財務省の財政規律に重点を置き過ぎた、あの姿勢も、やはりちょっと違っているのではないかと気がついたのです」「旧大蔵省、財務省というと専門家集団で政策にくわしいという固定観念があるですが、事実をずっと見てくると、むしろ肝心なところで政策を誤っているではないかという疑念が芽生えてきます。安倍政権のとき、平成19年の予算編成では54兆円くらい税収があったです。これは成長の成果です。もしあの段階でデフレから脱却していれば、これは一気にプライマリーバランスの黒字が出るまでいったではないかと思うわけです」(現代ビジネス 2012.11.29)

 安倍氏は、財務省は進めようとするデフレ下での増税は間違いと断定する。

「景気はまだまだ厳しいでしょう。これから財政出動しますが、デフレ下で増税をするので、景気を冷やしていく危険性もある。よりデフレが進んでいく危険性もあるでしょう。これは明らかに間違っています」(現代ビジネス 2012.11.29)

 財務省が強調する財政再建について、安倍氏は次のように言う。

 「成長せずに財政再建できるかというとそれは無理です」「絶対に有り得ない」(現代ビジネス 2012.11.29)

 このように語る安倍氏を、浜田氏は高く評価する。浜田氏は言う。

 「政治家のがみなさんが、先生(註 安倍氏)のように理解してくだされば日本もずいぶん良くなるですが」「安倍先生には、私から経済メカニズムについて補足なり、申し上げることはほとんどありません。みんなが今日の話を理解してくれれば、日本は変わります」(現代ビジネス 2012.11.29)

 安倍氏が首相になった後の産経新聞平成25年1月22日号のインタビュー記事でも、浜田氏は、首相の経済政策について、「非常に安心してみていられる。昔から私たちの発言によく理解を示していただいた。本当に(金融緩和政策を)推し進めようと、どこかで転機があったのだと思う」と述べている。(産経新聞 平成25年1月22日)

 なお、この産経の記事は、次のように書いた。

 「昨年の衆院選前から安倍首相に物価目標の導入を進言していたある知識人は、『データを示し、丁寧に説明したら安倍首相は真剣に耳を傾けていた。大物政治家で物価目標を理解した初めての人』と評価する」

 インフレ目標政策(インフレ・ターゲティング)は、わが国では1990年代から一般に知られている。平成元年(1989)に世界で最初に導入したニュージーランドに続き、カナダ、イギリス、スェーデン、オーストラリアが採用。平成9〜10年(1997〜98)のアジア通貨危機後、アジアでも採用国が増えた。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンは、平成10年(1998)に、わが国にインフレ目標政策を導入するよう勧めた。その時点で既に約10年間、多く国々で政策施行の実績が積み重ねられていた。IMFの調べでは、平成18年(2006)現在、世界で25か国が採用していたが、その後、米国も公に採用するようになった。わが国で最も早くからインフレ目標政策の採用を主張してきた岩田規久男氏は、「世界標準の政策」と呼んでいる。本年に入るまで変動相場制を採用している国で、インフレ目標政策を採用していなかったのは、日本のみとなっていた。

 先の記事は、安倍氏について「大物政治家で物価目標を理解した初めての人」と語った知識人の発言を紹介している。大物と言えば、首相、重要閣僚、政党の代表等の経験者だろう。そのクラスの政治家がインフレ目標政策を理解できていなかったとすれば、わが国の政界は、まことにうそ寒い。国家最高指導者は、経世済民のため、経済理論・経済政策をもっと勉強すべきである。日銀幹部や財務省高級官僚の説くことをうのみにして、国のかじ取りを誤ってはならない。ページの頭へ

 

8.わが国が取るべき政策はこれだ

 

 わが国が取るべき政策について、浜田氏はどのような意見か。基本的見解は、次のようなものである。

 「世界各国のマクロ経済の状態を見ると、新日銀法が施行されてからの15年間、日本だけが名目、実質の経済成長ともに1人遅れをとっている() 他の国も原燃料高や財政難に悩んでいるのに、日本だけ何が違うのか。それはデフレ気味に経済を運営し、金融政策を引き締め、円高を容認してきたことに大きな原因があります。そこから脱却するには、やはりインフレ目標と大胆な金融緩和が必要だと思います」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 こうした見解を持つ浜田氏は、リフレ派に賛同する。リフレ派とは、デフレで停滞した経済を回復させるために、適正なインフレへの回帰を図るリフレ政策を目指す経済学者や経済専門家である。

 「リフレ派と呼ばれる学者たちは、たとえば岩田規久男氏の『昭和恐慌研究会』などを通じて『デフレ円高のように、貨幣に関することは金融政策で直せる』と主張してきました。私も彼らの考え方に賛同しています」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 浜田氏は、リフレ派の代表格・岩田規久男氏を高く評価する。岩田氏は、「インフレもデフレも貨幣的現象である」とし、貨幣的現象は金融政策で解決できる、超円高の原因はデフレであり、金融緩和によってデフレと超円高を解決できると主張している。浜田氏は、基本的に岩田氏の主張を支持している。

 岩田氏については、拙稿「デフレ脱却の経済学〜岩田規久男氏」に書いたので、ご参照願いたい。

 浜田氏は、日本が取るべき政策として、インフレ目標の導入を提案する。

まず浜田氏は、経済成長で適度のインフレは正常な現象だという。

 「1960年から72年までの高度経済成長の時期、日本は毎年、ヒト桁のインフレを続けていました。いま経済成長が著しい中国でも、年に3〜4%のインフレが起こっています。経済成長に伴って適度のインフレが起こるのは、極めて正常な現象なのです」(「週刊現代」201329日号)

 それなのに日銀は、インフレを嫌うあまり、デフレ容認政策を取り続け、日本の長期不況の元凶となった。そこで、浜田氏は、インフレ目標政策(インフレーション・ターゲティング)を採用すべきだと説く。インフレ目標政策は、平成10年(1998)からクルーグマンがわが国に勧めている政策であり、岩田規久男氏らが導入を提唱してきた。浜田氏は、インフレ目標政策が必要だと支持する。ただし、これは次善の策だという。

 「私は、インフレ・ターゲットに対しては次善の策だと思っています。正しい経済理解に基づいて金融政策をやっていれば、こんなに円高になることもないし、高度成長期のように緩やかなインフレ率は実現できるはずですから。日銀が正しい経済学に従うのなら、それに任せてもいいのです。しかし、この20年間を振り返ると、日銀は正しい経済観に従って金融緩和をして来なかった。だから、目標の義務付けが必要なのです」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 インフレ目標の目標値については、次のようにいう。

 「デフレ期待がこれだけ定着してしまった現在、個人的には、世界の有力経済学者の言うように、インフレ目標はそれより高く3%でもいいのではないかと思います」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 かつてクルーグマンは、わが国は4%を目標とすべきと勧めた。岩田氏は現在、日銀に2%から3%のインフレ目標を中期的に達成することを政府は義務付けるべきだと主張している。この数字は、各国の中央銀行の歴史・経験から適切な範囲と見られる。

 これについては、インフレ期待が大きく醸成されると、長期金利が高騰するのでないかと心配する見方がある。この点について、浜田氏は次のように言う。

 「ノーベル経済学者のマンデルは、期待インフレ率が上がるほどには国債の金利が上がらないことを証明しています。実質金利は名目金利から期待インフレ率を引いたものですから、金融緩和によって名目金利が一定に抑えられている環境では、期待インフレ率が上がると実質金利は下がります。よって、その影響が名目金利に多少ハネ返って来たとしても、結果的に実質金利が下がって、投資し易い環境になることは変わらず、景気が刺激されることになります」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 金利には、次の関係がある。

 

  実質金利=名目金利期待インフレ率

 

 たとえば、名目金利がゼロでも、期待インフレ率が2%なら、実質金利はゼロから2を引いてマイナス2%となる。この金利をマイナス金利という。マイナス金利は、お金を借りると2%の金利がついてくるわけだから、投資が促進される。中央銀行は、人々が物価上昇を期待するように働きかけることで、実質金利を下げることができる。その方法が、量的緩和である。民間の金融機関が日銀に持っている当座預金残高の量を、国債や手形を買って調整する方法である。名目金利が低ければ、インフレ期待が大きく醸成されても、長期金利は高騰しない。

ページの頭へ

 

関連掲示

・拙稿「デフレ脱却の経済学〜岩田規久男氏

 

9.インフレ目標の下で大胆な金融緩和をせよ

 

 浜田氏は、インフレ目標のもとでの大胆な金融緩和こそ、わが国が取るべき政策だと主張する。しかし、日銀はこれまでこの政策を取ろうとしなかった。その点について、浜田氏は次のように批判する。

 「日銀は『金融緩和策を取るとハイパーインフレがやって来る』などと狼少年のように触れ回った。あげく、『デフレの要因は人口減少である』という摩訶不思議な理論を構築しました。そんな理論は、世界の経済学者たちのモノ笑いのタネです」(「週刊現代」201329日号)

 実際、現在世界の多くの国が金融緩和策を取っているが、ハイパーインフレになどなっていない。ハイパーインフレとは、物価が1万3千%以上になるとてつもない現象をいう。数十%、数百%程度のインフレにしても、敗戦や革命、天候異変を除くと、通常はいきなり爆発的に進むものではない。インフレが昂進してきたら、金融引き締めでさらなる昂進を抑止すればいい。3%を超える指標が出たら、少しブレーキを踏む。そのために中央銀行がある。

 人口デフレ論は藻谷浩介氏が『デフレの正体』(角川書店)で説いた説によるものだろうが、私見ではこの説は経済学的にも人口学的にもおかしい。人口が減少していてデフレになっている国は、先進国で日本以外にない。むしろ、西欧諸国や韓国は、インフレになっている。人口減少で重要なのは、生産労働人口の減少である。それによって予想されるのは、働き手が少なくなるための供給不足である。また働かずに消費だけする高齢者が増える。そこで起こるのは、需要過剰・供給不足の状態としてのインフレである。需要不足・供給過剰のデフレではない。しかもわが国で今後ますます少子高齢化と人口減少が進む一方、世界的には人口増加とそれによる食糧・資源・エネルギーの需要拡大が進む。世界的傾向の予測は、インフレである。それゆえ、人口が増加する世界の中で少子高齢化・人口減少が進む日本は、中長期的に需要過剰・供給不足でインフレになる可能性が高い。

 藻谷氏は、デフレを個々のものの価格の下落のことととらえている。だが、一部のものの価格が下がることがデフレはではない。デフレは、すべてのものの価格の平均である物価が、継続的に下落することを言う。これは常識の範疇である。藻谷氏は経済学の基本的な点の理解が怪しい。そのような人の説を、よりによって日銀が利用するとは、噴飯ものである。

 浜田氏は、インフレ目標の下で大胆な金融緩和をすべきと説く。この点をより具体的に述べる。

 「円高はドルに対して円の価値が高過ぎ、デフレはモノに対して貨幣の価値が高過ぎる。それを是正するには、他の要因も副次的には関係しますが、お金を刷って円の量を増やすのが第一歩です」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 「お金を刷って円の量を増やす」――これなのである。単純なようだが、まずこれである。浜田氏がお金というのは、経済学的にはマネタリーベースつまり日本銀行が供給する通貨、ベースマネーのことである。現金通貨と民間金融機関の日銀当座預金つまり法定準備預金を合計したものである。まず取るべき方策は、広い意味での通貨の供給量を増やすことである。それには、日銀が銀行等の持っている国債や手形を買って、当座預金口座に入れ、銀行から市中に日銀券が回るようにするとよい。

 金融緩和をしてゼロ金利になった場合は、どうすればよいか。浜田氏は次のように言う。

 「緩和が続きゼロ金利になってしまったときには金融緩和の仕方も考えて、国債以外別の資産を買うとか考えなくちゃいけない」(現代ビジネス 2011.3.10

 方法はいろいろある、日銀はやろうと思えばかなりのことができる。

 「伝統的な短期債を買う手段に比べて、日銀はやろうと思えばかなりのことができます。長期債券を買えば長期金利が下がり、経済にそれなりのインパクトを与えられるし、もっとドラスティックにやるならCP(社債)を買ってもいいでしょう。個別株式の購入はモラル的に問題がありますが、ETF(上場投信)を買ってもいいし、場合によっては外国通貨や外国債券を買ってもいい。また、後でちゃんと売却(市中から資金を吸収)できるなら、国債を直接引き受けてもいいのではないか」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 日銀は、短期国債だけでなく、長期国債、コマーシャル・ペーパー(社債というより、その一種である無担保割引手形)、上場投信(エクスチェンジ・トレイデッド・ファンド)、外国通貨、外国債等を買ってもいい、と浜田氏は言う。

 私見を述べると、満期まで期間の長い長期国債を買えば、長期的なインフレ期待が高まる。社債や上場投信を買えば、企業の資金調達を支援し、投資を喚起することができる。外国通貨や外国債券の購入は円安効果があり、輸出を後押しするものとなる。

 浜田氏は、さらに日銀が国債を直接引き受けてもよいという。昭和恐慌の時、高橋是清蔵相は、新規発行の赤字公債を発行して、日銀に直接引き受けさせ、それを財源として政府投資を行った。マンデル=フレミング理論によると、変動相場制の下では、政府による大量の国債の市中消化は、金利を上げ、円高が進み、輸出が不振になり、景気対策の効果を減殺するという。だが、日銀の直接引き受けであれば、この恐れがない。

 私見を述べると、国債は超長期債いわゆる永久国債とすることもできる。歴史的には、大英帝国時代のイギリスがこれをやっている。藤井厳喜氏がその研究をしている。また100年債なら償還のための各年度の負担は、100分の1に分散される。増税はその時の世代に大きな負担となるが、100年に分ければ、将来の世代と分担できる。この策は、高橋洋一氏が提案している。もっとも私は、永久国債より、政府貨幣発行特権の発動が上策と考える。巨大なデフレ・ギャップを持つわが国は、強力な政治的指導力と国民の一致団結があれば、この究極の救国策を打つことも可能である。ページの頭へ

 

関連掲示

・拙稿「東日本大震災からの日本復興構想

 永久国債については第3章「藤井厳喜氏の提言」、政府貨幣については、第4章「丹羽春喜氏の提言」をご参照下さい。

 

10.金融緩和を十分にやれば財政政策も有効


 もう一点、私見を述べると、わが国の現行法の規定では、わが国の通貨は政府貨幣と日銀券で成っており、政府は、独自に政府貨幣を発行することができる。このことを踏まえ、丹羽春喜氏は、デフレ脱却のため、政府貨幣発行特権を発動せよ、と提案している。丹羽氏によると、巨大なデフレ・ギャップが存在するわが国の場合は、「政府の貨幣発行特権」を理想的な財政財源の調達手段として使うことができる。政府貨幣は、理論的には、生産能力の余裕がある限り、デフレ・ギャップの枠内で発行可能である。
 浜田氏は政府貨幣発行特権の発動について触れていないが、「マクロ的に生産能力の余裕がある場合には、政府の貨幣発行特権の発動に依拠すべきだ」とする政策提言は、20世紀の半ばごろより現在まで、ラーナー、ディラード、ブキャナンといったノーベル賞受賞者級の巨匠経済学者から繰り返しなされてきた。政府紙幣の発行は、バーナンキFRB議長の持論でもある。
 また、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツは、平成15年(2003)4月14日、日本経済新聞社、及び日本経済研究センターの共催によって東京で開かれたシンポジュウムで、日本は政府の財政財源の調達のために、「政府紙幣」の発行に踏み切るべきだとする提言を行った。当時日銀理事の白川方明氏(現在日銀総裁)は、政府紙幣も日銀券も紙幣であることには変わりはないから、スティグリッツ提案は無意味であると、批判した。しかし、丹羽氏は白川氏の意見は、「政府紙幣と日銀券の間における、造幣益の有無という決定的な違いをまったく見逃してしまっている」と指摘している。

政府貨幣の発行は、政府の造幣益をもたらす。また日銀券の発行額は日銀の負債勘定に計上されるが、わが国の現行法のもとでは、政府貨幣の発行額は政府の負債としては扱われない。スティグリッツも、政府紙幣の発行は「債務としては扱われず、政府の財政赤字には含まれない」と述べている。

日銀が政府に協力的でなく、上記の金融政策によるデフレの脱却がうまく進まなければ、政府貨幣発行特権を発動すべきである。これこそ、救国のための究極の方法である。詳しくは、丹羽春喜氏の理論と提言に関する拙稿をご参照願いたい。
 浜田氏は、デフレ脱却において、本来金融政策だけで十分、財政政策をやるなら金融政策を全開で行なうことが必要、金融緩和を十分にやっている時は財政政策も有効という見解である。
 具体的には、次のように述べている。
 「本来私も金融政策だけで十分ではないかと思っています。ただ、政府内には『最後の一押しは財政政策が必要』という意見がある。一方、『金融政策で財政危機を救えるのに、財政で大盤振る舞いすると救えなくなるのではないか』と不安を持つ人もいて、私はどちらかと言えばそちらの意見に賛成です。それでも財政政策をやるならば、金融政策を全開で行なう必要があります。財政拡大で国債を大量に発行し、金利が上昇すると、海外資金の流入を招き、円高につながります。円高で輸出減、輸入増が起きると、外需が縮小し、財政出動で喚起した内需を相殺してしまう。これは、マンデル・フレミング・モデルの考え方です。そうならないために、金融政策による金利の安定化を同時に図る、つまり金融緩和を十分にやっているときは、財政政策も効いてきます。その意味でも、私は金融政策が主で、財政政策を従と考えています」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

関連掲示
・拙稿「『救国の秘策』がある!〜丹羽春喜氏1
・拙稿「救国の経済学〜丹羽春喜氏2

 

11.デフレ脱却とともに円高是正もできる

 

わが国は、デフレとともに円高に苦しんできた。円高は是正しなければならない。
 浜田氏は、「円高はドルに対して円の価値が高過ぎ、デフレはモノに対して貨幣の価値が高過ぎる。それを是正するには、他の要因も副次的には関係しますが、お金を刷って円の量を増やすのが第一歩です」と言っている。(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20
 浜田氏の言うように、お金を刷って円の量を増やすことで、円高は是正される。ドルの総供給量に対して、円の総供給量が少ないと円高になる。それゆえ、円の供給量を増やすと、円安にできる。仮に1ドルが80円だとすると、円を1.5倍に増やせば、120円になる。このように、通貨の価格は、基本的には量的な相関関係で決まる。特にリーマン・ショック後、米英等が通貨の供給量を大幅に増やしているのに、日銀はほとんど供給量を増やしていない。そのため、円高が昂進した。
 現在の超円高は、デフレによる現象でもある。デフレだと、なぜ円高になるか。私の理解では、日本のデフレは、消費増税や財政支出削減による需要減少に加えて、金融引き締め政策による。需要不足・供給過剰の状態で通貨の供給量が少ないから、デフレが悪化している。デフレはものの価値が下がる一方、貨幣の価値が高くなる現象である。このことは、円の購買力が上がるわけだから、為替市場では円高の傾向を生む。また、デフレが続くと多くの人が考えると、景気は悪くなり、株は下がると予想するから、資金は株式より国債に向かう。日本国債の安定性を見た海外の投資家は、他国の債券を売り日本国債を買う。日本国債を買うために、ドル・ユーロ・アジア通貨等を売って円を買うので、円が高くなる。また、為替市場における通貨の売買は、それぞれの通貨を発行している国ないし国家連合の経済力への市場の評価が数字に表れる。リーマン・ショック後、財政悪化により暴落の可能性が懸念されるドルやユーロに比べて、円は安定した通貨と評価され、円買いが行われ、円の独歩高が進んだ。こうした諸要因による円高を抑えるには、日銀が円の供給量を増やして、適正な価格を維持できるようにしなければならないところだった。だが、日銀は自己流の理論によって、犯罪的な不作為を続けた。日銀による円の供給量がドルの供給量に比べて極めて過少だから、ひどく円高ドル安になってしまった。ユーロ、アジア通貨等に対しても同様である。
 では、ドルに対して円はどれくらいの水準が適当か。円高・円安の関係は、お金も一種の商品と考えると、分かりやすい。仮に1ドルで円を80円買えるのと、円を120円買えるのとを比べると、80円しか買えないのは円が高く、120円も買えるのは円が安いということになる。円高だと、日本からの輸出品はその分、高くなったと同じことになる。逆に日本への輸入品は安くなる。円安だと、日本からの輸出品は安くなり、日本への輸入品は高くなる。例えば、1ドル120円だったのが、1ドル80円になったとすると、以前は1万ドルで120万円の日本車が買えたのに、円高のために、同じ1万ドルで80万円の日本車しか買えなくなる。120万円の日本車を買おうとすると、1万5千ドル払わねばならない。このように円高になると、日本製品は海外では高くなって売れなくなる。輸出製品を製造・販売している企業は、他国の類似商品に価格面で太刀打ちできなくなってしまう。
 エルピーダメモリが倒産し、ソニー、パナソニック、シャープ等が他国の企業との競争に勝てない最大の要因は、急速な円高にあった。個々の企業の経営努力の範囲を超えたハンディキャップが、日本の企業を苦しめ、日本の技術と人材の海外流出を招いてきた。自国の企業を援護しなければならない政府・日銀が自国の企業を不利にし、結果として国益をい、国富を失うことをやってきた。悪政が日本衰退の危機を引き起こしている。
 経験的には、1ドル70〜80円だと日本企業は輸出でひどく不利になる。1ドル120〜130円だと、圧倒的に有利である。だが、円安があまり進むと、相手国と貿易摩擦が大きくなる。不買運動が起こったり、規制をかけられたりし、政治問題にも発展する。ドルに対する円の水準について、浜田氏は、次のように言う。
 「私は、1ドル100円前後が望ましいと考えています。110円では、少し行き過ぎでしょう。一刻も早く、100円の水準まで持っていくことが必要です」(「週刊現代」201329日号)
 昨年(平成24年)12月衆議院選挙で自民党が大勝し、安倍政権が誕生することになったときから、市場の期待は高まり、株高円安が続いている。これに対し、欧米では、日本の円安で通貨戦争に発展するのではないかとの懸念が出ている。
 これについて、浜田氏は次のように言う。
 「『通貨戦争は悪である』という考え方は、前世紀の固定相場制下の発想です。いまの変動相場制下においては『通貨政策の失敗はそれぞれの国の責任である』というのが、政治経済学の国際常識なのです」「そもそも()、日本はこの3年間、世界中からいいように食い物にされてきたのです。今回は、それをようやく正常な形に戻すことに決めたということです。それを海外が非難すること自体、おかしなことですし、日本はそうした非難を恐れる必要はありません」と。(「週刊現代」201329日号)ページの頭へ

 

12.そのうえ経済成長を目指すには、国民の団結が必要

 

 浜田氏の説く日本が取るべき政策を概観してきたが、こうした政策を行って、デフレ脱却から経済成長へ向かうプロセスはどうなるか。浜田氏は、次のように述べている。

 「物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がりません。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線(インフレ率が上昇すると失業率が下がることを示す)を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増えるのです。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていくのです。その意味では、雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策と言えます」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

 私がこの発言で重要だと思うのは、国民の共同意識の必要性である。働く人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢をし、まず失業者を減らす。特に若者の雇用を増やす。それによって、国全体の生産能力を上げ、国内総生産、名目GDPを増やす。その結果、国民全体が豊かになることを目指すーーこういう考え方は、国民が共同意識を持ち、国民共同体に基づく国民経済を発展させようという考え方である。

 一個人、一企業、一業界の利益のみを追求するのでなく、国民全体の利益、民利国益を追求するのでなければ、デフレを脱却し、経済成長の軌道を進むことはできない。日本人が日本精神を取戻し、国民が団結することが、日本経済の復興、ひいては日本国復興の原動力である。それがまた究極的には一個人、一企業、一業界の利益にもなる。全体と部分、部分と部分が共存共栄の関係になっていてこそ、部分の維持・発展も可能になる。インフレもデフレも、資本の論理を規制する国家の論理の発動を要する現象である。なかでもデフレからの脱却には、市場経済における国民経済、ひいては国民共同体の回復・強化を必須とするのである。

ページの頭へ

 

結びに〜日本は必ず復活する

 

 “伝説の教授”であり、また安倍内閣の金融政策の指南役である浜田宏一氏は、日本国民に、わかりやすく日本復興のための経済学を説く。そして、日本経済は復活できると力強いメッセージを送ってくれている。

 平成25年(2013)2月浜田氏は、次のように語った。

 「そもそも日本経済は素晴らしい技術と洗練された製造ノウハウ、そして能力の高い人材を有していて、復活できない理由がありません。これまでは、政府や日銀の政策に問題があって、活気を取り戻せないでいただけなのです」(「週刊現代」201329日号)

 「日銀がようやく政策を百八十度転換したことで、今後の日本経済の復活の第一歩となりました。引き続き、必要に応じた財政政策などを取ることで、日本経済は必ずや、上向いていくことでしょう。私たちは、日本経済の復活に、大いに自信を持ってよいのです」(「週刊現代」201329日号)

 日本人に自信と勇気を与えてくれる言葉ではないか。

 最後に再び、浜田氏の『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)から、氏の言葉を引こう。浜田氏は、日米の著名なエコノミスト、政策当事者等60人以上に聞き取りを行った結果として、次のように書いている。「外国人学者のほとんどすべて、尊敬すべき日本の学者たちは、潜在的成長率のはるか下で運営されている日本経済を『ナンセンス』だと考えているのだ。そう、アメリカは、いや世界は、日本経済が普遍の法則に則って運営されさえすれば直ちに復活し、成長著しいアジア経済を取り込み、再び輝きを放つことができることを知っている」と。ページの頭へ

 

引用資料

・資料1 ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20

http://diamond.jp/articles/-/30804

ダイヤモンド・オンライン 浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換 インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」

・資料2 「週刊現代」201329日号 現代ビジネス

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34773

「安倍バブル」の教祖浜田宏一が大いに語る「1ドル100円、日本は甦る」

・資料3 現代ビジネス 2012.11.29

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34188

浜田宏一(イェール大学教授)×安倍晋三(自民党総裁)「官邸で感じた日銀、財務省への疑問。経済成長なしに財政再建などありえない」

・資料4 現代ビジネス 2011.3.4

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2180

浜田宏一イェール大学教授「経済学の現実を無視する菅内閣と日本銀行が国を滅ぼす」  聞き手:高橋洋一 「経済学の泰斗」が憂国の提言 第1回

・資料5 現代ビジネス 2011.3.10

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2187

浜田宏一イェール大学教授「日銀の政策は"too little, too late"だ」 憂国のインタビュー第2回 聞き手:高橋洋一

・資料6 現代ビジネス 2011.3.18

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2188

 浜田宏一イェール大学教授 憂国のインタビュー第3回 聞き手:高橋洋一 日本の新聞が日銀批判を語らない理由

・資料7 産経新聞 平成25年1月22日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130123/fnc13012300010000-n1.htm

「日銀法改正で政府と経済目標共有を」 浜田内閣官房参与

 

参考資料

・浜田宏一+若田部昌澄+勝間和代著『伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本』(東洋経済新報社)

・浜田宏一著『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)

 

関連掲示

・拙稿「経世済民のエコノミスト〜菊池英博氏

・拙稿「橋本=小泉構造改革を告発〜山家悠紀夫氏

・拙稿「日本経済復活のシナリオ〜宍戸駿太郎氏1

拙稿「デフレ脱却の経済学〜岩田規久男氏

・拙稿「『救国の秘策』がある!〜丹羽春喜氏1

・拙稿「救国の経済学〜丹羽春喜氏2

・拙稿「日本復活へのケインズ再考

 

「政治・経済・社会」の題目戻る

 

ber117

 

ICO_170

 

トップ日本の心Blog基調自己紹介おすすめリンク集メール